先端技術満載で公道走行可能 メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプトへ試乗 航続1126km以上 後編

公開 : 2022.08.08 08:26

近未来のBEVを見据え、最新の空気力学で仕上げられたEQXX。航続距離を最大限に伸ばす技術を、英国編集部が体験しました。

駆動系に投じらた技術力の高さを感じる

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプトは、ルーフから滑らかに傾斜するリアエンドまでソーラーパネルが覆っており、リアガラスは存在しない。車内から、後方を直接目視することはできない。

幅が1100mmあるという、緩やかにカーブを描く巨大なモニターで占拠されたダッシュボードには、スイッチ類や小物入れが見当たらない。解像度は8Kということで、極めて高精細だ。

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプト
メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプト

タッチモニターとなっている部分には、メニュー操作で幅広いデータを表示できる。ボディ前端に内蔵されたセンサーが計測した、風向もわかる。

スタイリッシュでありつつ、多くのショーカーとは異なり実用性も備わる。一般的なメルセデス・ベンツの量産モデルと、同様の機能を網羅していることに感心した。

発進は既存のEQEと同様に、ステアリングコラムのダイレクト・シフト・レバーをPから引き降ろし、アクセルペダルを徐々に倒していくだけ。走行中は、駆動用モーターの滑らかで洗練された質感が印象深い。

1台のみ製作されたコンセプトカーでありながら、駆動系に投じられている技術力の高さを、はっきり感じ取ることができる。力強く加速し、スムーズにスピードを高めていく。最高速度は140km/hまでに制限されていたが、余力があるようだった。

今回の試乗は、メルセデス・ベンツの技術者がリモートで監視している。どれだけ鋭く加速できるのか、ストレートで試すのは止めておいた。

回生ブレーキが生む新たな運転の面白さ

そのかわり、テストドライバーが達成したエネルギー効率を確かめることにする。穏やかな高速道路程度の速度で、クルージング状態を保つ。一般的な条件で、可能な限り航続距離を伸ばせるよう試みる。

モニター式のメーターパネルには、リアルタイムで電費効率が表示される。当初はエアコンを切ってエネルギーを温存しようと考えたが、正午には気温が30度にまで上昇してしまった。諦めて、車内の温度を下げることにした。

メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプト
メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX コンセプト

クルージング中は素晴らしく上質。駆動用モーターは殆ど音を発せず、風切り音すら聞こえてこない。スピードが上昇するとリアのディフューザーが展開し、ボディの長さを伸ばし、気流を整えてくれる。前後方向の安定性にも貢献するという。

回生ブレーキには4モードが存在し、ステアリングホイール裏のパドルで選べる。最も効きを強くすると、タイトコーナーの入り口でブレーキペダルを踏む必要がないほど、高い制動力が得られる。

タイヤは、ブリヂストンが専用開発した20インチを履いている。転がり抵抗が低く、サイズは185/65と幅が狭い。回生ブレーキの効きを弱くすると、スルスルと想像以上に遠くまで惰性走行してみせた。

回生ブレーキを切り替えると、エネルギーの消費量も変化する。この操作が、新たな運転の面白さを生んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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