現在の英国車のベスト アストン マーティンDBX707へ試乗 ノーマルからGT3級の変貌
公開 : 2022.08.05 08:25 更新 : 2022.11.30 13:32
エンジンとシャシーへ徹底的な手が加えられた707。優れるDBXが一層見事なSUVになったと英国編集部は評価します。
もくじ
ーポルシェ911を白眉のGT3へ仕上げたのに近い
ー4.0L V8ツインターボは707psと91.6kg-m
ー速度感を掴みにくいほど巧みなシャシー制御
ー機敏な身のこなしと懐の深い操縦性
ー直感的に運転できるSUVは他に存在しない
ーアストン マーティンDBX707(英国仕様)のスペック
ポルシェ911を白眉のGT3へ仕上げたのに近い
マッシブな佇まいの、車重2.2tもあるアストン マーティンDBX707は、現在の英国で製造される自動車のベストといっていい。少し軽はずみに聞こえるかもしれないけれど。
アストン マーティンも、このクルマの完成度には自信を持っている。英国編集部も、その事実を知って欲しいと考えている。そこで707psを発揮するスーパー・クロスオーバーを、改めて英国の一般道で運転してみることにした。
AUTOCARを定期的にお読みいただいている方ならご記憶かもしれないが、既にシルバーストーンのストウ・サーキットと、イタリアのサルデーニャ島で試乗は済ませている。筆者の思い入れは、通常より大きい。
英国価格は通常のDBXより約1万8000ポンド(約300万円)高い、19万ポンド(約3173万円)。それでいてアストンマーティンは、売れるDBXの半数を、707が占めて欲しいと考えている。
既にDBXは、ブランドの販売台数の5割を占める稼ぎ柱。707は、素晴らしい完成度を備えるだけでなく、重要な収入源にもなるのだ。
707psを発揮する高性能SUVとして、スタイリングはかなりアグレッシブ。この造形が美的感覚と一致するかどうかは、人によって異なると思う。それでも内容を詳しく知るほど、約1万8000ポンド(約300万円)の追加金額は妥当に見えてくる。
筆者の印象としては、DBXがDBX707へアップデートされた変貌ぶりは、ポルシェ911を白眉の911 GT3へ仕上げたものに近い。911 GT3から、よりハードコアな911 GT3 RSにしたようなものではない。飛躍が大きいのだ。
4.0L V8ツインターボは707psと91.6kg-m
4.0L V8ツインターボエンジンの最高出力は、もともと不足なかった550ps/6500rpmから707ps/6000rpmへ大幅に上昇。これほどのパワーアップは、ソフトウエアを書き換えただけでは実現できない。
通常のDBXのエンジンには、メルセデスAMG GT 63 4ドアクーペ用のターボが組まれている。だが707には、より大きくブースト圧を短時間で高める、2ドアのGT ブラックシリーズ用ターボを採用。ボールベアリングを内蔵し、16万rpmで回転するらしい。
リアアクスルの電子制御リミテッドスリップ・デフも、GT 63用のものが搭載される。通常のDBXにはE63 S用のものが組まれるが、能力としては15%ほど高いそうだ。
トランスミッションもGT 63用となる、ウェットクラッチ式の9速オートマティック。20.4kg-m増しの91.6kg-mという最大トルクを受け止められるうえに、アクセルレスポンスと変速スピードも向上させている。
リアのドラブシャフトも強化された。プロペラシャフトのねじり剛性も高められている。肉体改造で車重は20kg増したが、電動化技術は一切採用しないという潔さでもある。
ここまでパワートレインがアップデートされると、フロントマスクにも改良が必要になる。ボディ前面の空気の流れが調整され、エンジンへ送られる吸気量は最大で80%も増えている。もちろん、冷却系も強化してあることはいうまでもない。
リアバンパー下部には、DBR9風のディフューザーが与えられた。シャシー下面の空気を滑らかに吐き出すために。