ラ・フェラーリのシャシーx812のV12 フェラーリ・デイトナ SP3へ試乗 五感で堪能する跳ね馬 前編

公開 : 2022.08.03 08:25

ラ・フェラーリのカーボン製タブに、812 コンペのV12を融合。壮観なボディに包まれたフェラーリを、英国編集部が試乗しました。

SP1とSP2に続くイコナ・シリーズの第3段

フォードとキャロル・シェルビー氏がフェラーリに挑んだドラマを描いた、2019年の映画「ル・マン66」をご覧になった読者もいらっしゃると思う。日本では「フォードvsフェラーリ」という邦題が付けられている。

世界スポーツカー選手権の1戦として開かれていたル・マン24時間レースで、フェラーリは1966年までに8戦7勝という圧倒的な強さを披露した。しかし、7.0L V型8気筒エンジンを搭載したフォードGT40 Mk IIが、その年は優勝を掴み取っている。

フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)
フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)

翌年、1967年の世界スポーツカー選手権の初戦となったデイトナ24時間レースへ、フェラーリは2台の330 P4で挑んだ。4.0LのV型12気筒エンジンを載せて。一方のフォード勢は、6台態勢という物量で迎えた。

オーバルコースで次々とGT40 Mk IIがリタイアしていくなか、フェラーリは咆哮を放ち続けた。見事に1-2フィニッシュを果たしただけでなく、市販仕様のP4といえる、412Pも総合3位を奪取。ポディウムをマラネロのチームが支配したのだった。

この圧勝は、伝説的な物語として記憶に刻まれた。1968年に発売された公道用モデル、365 GTB/4がデイトナと呼ばれるようになったのも、この勝利がきっかけ。実際のところ、フェラーリが公式にデイトナと称したことは一度もない。

だが、2021年に発表されたモデルに対して、フェラーリは正式にデイトナと名付けた。フェラーリ812 スーパーファストがベースとなったモンツァ SP1とSP2に続く、スペシャル・モデル、イコナ・シリーズの第3段となる。

330 P4の勇姿と重なる美しさ

フロリダ州のサーキット名を冠するモデルだけあって、55年前の栄冠を想起させる、素晴らしいスタイリングが与えられている。滑らかに曲線を描くフロントフェンダーやテール周りの造形は、まさに330 P4の勇姿と重なる。

モンツァ SP1とSP2はバルケッタ・ボディで、フロントガラスやルーフが想定されていなかった。デイトナ SP3にはその両者が備わっており、遥かに乗りやすそうだ。

フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)
フェラーリSP3 デイトナ(欧州仕様)

筆者はこれまで、330 P4が歴代の自動車で最も美しいと考えてきた。だが、これはその考えを改めるほど素晴らしい。実際に目の辺りにするデイトナ SP3は、メチャクチャにカッコいい。思わず声を上げて、小躍りしたくなるほど。

フェラーリがデイトナ SP3を生み出した理由は、ぶっちゃけていうなら、恐らく資金稼ぎのためだろう。599台が、英国価格で170万ポンド(約2億8390万円)という高額で販売される。既に完売済みらしいから、その目的は果たしている。

それだけではない。50年ぶりに、フェラーリがスポーツカー・レースへ復帰することを、世界中に告知するという狙いもある。ファクトリー・チーム態勢で。

ただし、開発中のLMH(ル・マン・ハイパーカー)マシンは、2023年のデイトナ24時間レースへの出場が決まっていない。フェラーリが参戦を考える、世界耐久選手権(WEC)の1戦には含まれていないことが理由だという。

少なくとも、2023年のル・マン24時間レースは予定にある。今回の試乗場所も、サルト・サーキットがあるフランス北西部の街、ル・マンが舞台となった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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