ランドローバー・レンジローバー・オートバイオグラフィーP530試乗 王者の品格 ハイテク技術を味方に
公開 : 2022.08.08 12:05
ランドローバー・レンジローバー・オートバイオグラフィーP530(LWB)に試乗。最新技術を味方にした伝統の様式美を体感。
シルエットからにじみ出るDNA
AUTOCAR JAPANに掲載されている新型レンジローバーの記事はざっと数えただけでも10以上。
それらに目を通してワクワクしつつ、一方ではポジティブな表現の多さに「本当だろうか?」と疑いたくなる自分もいた。
そもそも5代目レンジローバーの最終に近いモデルの完成度がこの上なく高く、「それ以上」を想像しにくかった。
それに新型プラットフォームを得たとはいっても、それは後からデビューすることになるフルEVに焦点を当てたものなのでは? という読みもあった。
新型は例によって2種類のホイールベースが用意されている。
今回われわれはガソリンV8を搭載するオートバイオグラフィーP530のLWBをメインに試乗している。
だが注意しなければならないのは「V8モデルの受注が3年先まで埋まっている」という点だろう。
注文が殺到していることと、エンジンの供給元であるBMWからの数が限られているためという問題があるらしいのだが、詳しくはオフィシャルHPに予約に関する説明があるので気になる方は目を通していただきたい。
さて6代目と対面。
真正面から見たフロントマスクは先代とあまり変わらない印象だが、ボディ側面からテールエンドにかけてはデザインスタディのようにフラッシュサーフェイス化されており、未来感が漂う。
ボディの前と後で雰囲気が異なるようにも見える。だがそれでも、全体のシルエットはレンジローバー以外の何者でもないという点はさすがだ。
キモは先端技術ではなく……
スペックシートからわかるのは、先端技術がフル装備されている事実である。
路面の状況にあわせて減衰を制御するエアサスには、ツインバルブの新型ダンパーが組み合わされる。
さらに48V駆動の電制スタビライザーも付いているし、後輪操舵も追加されている。
だがこれら「今どきの機構」が盛り込まれるタイミングとしてはライバルより遅いことは否めない。
ともあれP530に乗ってみよう。
室内のデザインの刷新の具合は外観に準じている。
エアコンの吹き出し口が直線的な意匠の中に組み込まれるなど、先代よりシンプルになっているが、ひと目でレンジローバーとわかる。
5人乗り仕様のリアシートは3人掛けとなっているが、実質2人掛けショーファー仕様でスペース的にも申し分ない。
走りはじめは極めて静かで、額面通り2.7tの小山が静々と動く感じ。
しっとりとして重厚だが、重ったるくはない走りは歴代のレンジローバーに共通するキャラクターだ。
しばらくドライビングに没頭し、山道でペース上げてみたりもした。
そこでわかったのはロールやピッチングを含む「余計な動き」の一切が極めて少ないこと。
だがそれ以上に驚かされたのは、ハイテクが先回りして演出しているに違いないこれらの挙動に、人為的な、カクカクした、継ぎ目のような違和感が一切ないこと。
唯一あるとすれば、バックしている最中の最大7.3°切れるという後輪操舵くらい。
ハイテクはその存在感を消せてこそ一流。
6代目は新たな技術の連携を徹底することでレンジローバーらしい、しかし先代を完全に超越するような高みに達したのだ。