世界最速を目指すV10マシン ロダンFZero F1より軽いサーキット専用車、来年生産開始
公開 : 2022.08.10 18:05
ニュージーランドのロダン・カーズは、新型のサーキット専用車「FZero」を発表。最高出力1076psを発揮するシングルシーターで、エアロダイナミクスに特化したボディが特徴的です。
最速を目指した軽量シングルシーター
ニュージーランドの自動車メーカー、ロダン・カーズ(Rodin Cars)は、文字通り「地上最速のクルマ」を目指す、新型のサーキット専用マシンを発表した。
新型「FZero」は、ハイブリッドの4.0L V10ターボガソリンエンジンをミドシップ搭載したシングルシーターである。現代のF1マシンよりも約50kg軽く、価格は180万ポンド(約2億9000万円)。サーキット走行を目的としたモデルで、「公道やレースの規制を受けない」ように開発された。
コンピュータ事業で財を成したオーストラリア人、デビッド・ディッカーCEOは、早ければ来年の夏に納車が始まり、初期ロットは27台に限定されると語っている。早ければ今年のクリスマスにもプロトタイプを走らせるという。
AUTOCARは、ドニントン・パーク・サーキットに新たに開設されたロダン・カーズの英国拠点を尋ね、ディッカーに話を聞いた。ディッカーは以前、ロータスT125をベースに「FZed」を製作したことで英国で注目を集めた。
彼はAUTOCARの取材に対し、新型FZeroの開発には「数年前から」取り組んできたが、レッドブルが最近発表したRB17に刺激を受け、今回の発表に至ったとしている。
「あのクルマは、わたし達に自信を与えてくれました」とディッカーは言う。「レッドブルが1台500万ポンド(約8億円)のクルマを50台も売れるというのなら、我々のクルマにもチャンスがあるに違いないと思ったのです。あとは、人々に喜ばれるクルマを作るだけです」
ディッカーは熱心なカーコレクターであり、フェラーリでサーキットを走るレーサーでもある。新型FZeroの開発では、細部に至るまで綿密にコントロールしている。FZeroはニュージーランド本社の工場で生産される予定だ。
ディッカーによると、V10エンジンはイングランド東部リンカンシャーに拠点を置くレース用エンジン開発企業、ニール・ブラウン・エンジニアリングが製作する特注のものを採用するが、それ以外のコンポーネントはほぼすべて自社製作される予定だという。
V10ハイブリッドで1000馬力超
このエンジンだけで最高出力1000ps/9000rpm、最大トルク92.6kg-m/7250rpmを発揮。さらに、176psの電気モーターをスターター、オルタネーター、電力回生装置として利用し、「トルクギャップを埋める」そうだ。
1176psに及ぶトータルパワーは、リカルド社製の新型8速ATを介して後輪に伝えられる。
F1風のカーボンファイバー製タブシャシーとレーススタイルの全輪独立サスペンションを採用。特殊な油圧式ハイトアジャスターにより、高速走行時の空力負荷がかかっても車高を維持するという。
CFDを駆使して開発されたボディは、オープンホイールよりもはるかに優れた空力効率と安定性をもたらすとディッカーは説明する。コックピットのキャノピーを閉じれば、オープンホイールにつきまとう高速走行時のバフェッティング(機体を叩く気流の渦)からドライバーを守り、ドライビング・エクスペリエンスを堪能できるようになる。
FZeroは、全長5.5m、全幅2.2m、ホイールベース3.0m、全高1.13mと、軽量でありながら意外にも大型である。空力のダウンフォースを高め、ドラッグを最小化するためだという。
エグゾーストマニホールドは3Dプリントされたチタン製で、チャージパイプとプレナムはカーボンファイバー製のコンポジット。ホイールは、OZレーシングがFZeroのために特別に製作した18インチの鍛造マグネシウム製である。
ちなみに、ロダン・カーズという社名は、「考える人」の彫像で知られるフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンに由来する。ディッカーは、有名な彫刻家の名を自分の会社の名前にしたことについて、「自動車というのは、完全に人間の思考の産物です。動物の名前を使うなんて馬鹿げていますよ」とストレートに語っている。