「メルセデス・ベンツEQB」の知っておきたい話 EVになった7人乗りSUV 350 4マティック(試乗編)

公開 : 2022.08.12 12:15  更新 : 2022.08.12 12:20

人気SUVがEVに。メルセデス・ベンツEQBの試乗レポートです。「試乗編」では、内装・パッケージ・走りのインプレッションをお届けします。

乗り心地/ハンドリングについて

(試乗編ではEQB 350のインプレッションを中心にレポート)

EQB 350 4マティックの試乗車はOPのAMGラインが装着され、パッケージ装備として電子制御ダンパーを採用したスポーツサスと20インチホイール(235/45R20)が採用される。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マティック(デジタルホワイト/AMGラインパッケージ)    宮澤佳久

一応「走り」の仕様なのだが、存外乗り心地がいい。

段差の突き上げも少なく、バネ下重量を意識させる車軸周りの揺動感も少ない。ロールの入りや微小域のストローク感も上手に出ている。

街乗り等々では快適性に優れたSUVの印象。BEV化でGLBに対して300kg近く重くなった車重も走りの質感では有利なポイントだ。

ハンドリングも「いつものメルセデス車」。コーナリング中の4輪の接地バランスの安定とちょっと深めの舵角を維持しながらのラインコントロール性のよさが、クルマに対する信頼を高める。

SUVの重量や重心高、高い着座位置を意識させない。バッテリーの床下配置で下がった重心高も効いているのだろうが、回頭・旋回力の立ち上がりや収束の特性が馴染みやすい。

比較編の動力性能で述べた「無意識下のフィードバック」は操縦性にも共通し、意のままと安心の高水準での両立が運転ストレスを低減してくれた。

内装/3列目シート どんな感じ?

キャビンスペースはGLBを踏襲している。全長はミドルSUVでは標準的な4.7m弱。

外観を見ても分かるように、キャビン後半分までボリュームを与えた実用的なプロポーションを採用。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マティックの3列目シート(ブラック/レザーDINAMICA)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マティックの3列目シート(ブラック/レザーDINAMICA)    宮澤佳久

常用するにはスペースが不足気味だが、サードシートも備わっている。実用志向のSUVらしい設計だ。

一部加飾が異なるが、インパネ周りのデザインもGLBとほぼ共通。

BEVに特殊性とか特別なイメージを求めるユーザーには物足りないかもしれないが、実用性に優れたミドルSUVとしてEQBが開発されているなら、パワートレイン以外の要素が共通していても不思議ではない。EQBのキャビン設計は実用的ミドルSUVとして練り込まれているわけだ。

ちょっと不可解なのは前席パワーシートの非採用。

EQAも同様なのだが、“効率向上のためのダイエット”とするには無理があり、他のメルセデス車ラインナップとのバランスを考えても欲しい。

また、装備全般はA/BクラスGLA/GLBクラス同様に、メルセデス車では比較的シンプルである。

「買い」か?

キャビンはミドルSUVとして実用性高く、走りの質感に優れ、「EQB 350 4マティック(870万円)」ならプレミアムを性能面の余裕からも実感できる。

価格は「GLB 200d 4マティック」の277万円高。「AMG GLB 35 4マティック」よりも60万円高。

メルセデス・ベンツEQB 250の荷室。左右の3列目シートと、右側の2列目シートを倒した状態。
メルセデス・ベンツEQB 250の荷室。左右の3列目シートと、右側の2列目シートを倒した状態。    宮澤佳久

補助金等があるので支払い差額はもっと小さくなるが、実用のコスパをモノサシにすれば一般性は低い。

なお、「EQB 250」は82万円安の788万円。価格帯と差額、性能差を考慮するとけっこう悩ましい。

ハイトワゴン的用途なら「250」がお得な印象だが、SUV用途も視野に入れれば4WDの「350」を選ぶのが無難でもある。

そして何よりも気になるのは、航続距離と充電インフラ。

100kmを安全マージンとすれば実用航続距離は400km前後。遠出なら充電スポットの確認も必要……等々は、EQB特有の問題ではないが、BEVの走りは魅力的でもインフラ・周辺技術が未整備なのが現実である。

クルマの出来がいいだけに甚だ残念なのだが、現状は購入予算潤沢で適応用途や使用環境の条件をクリアできるユーザー限定と考えるべきだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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