なぜプラットフォーム共有が増えているのか 自動車メーカーに好まれる理由とは
公開 : 2022.08.17 06:25
昨今、自動車業界では「プラットフォームの共有」が当たり前になってきています。VWグループのMQBプラットフォームは、過去10年で3200万台以上のクルマに使用されてきました。そのメリットとは。
共通プラットフォームで得られる莫大な知見
今年、フォルクスワーゲン・グループは、MQB(Modularer Querbaukasten)プラットフォームの市販車への導入10周年を迎えた。2012年以来、累計3200万台以上の自動車に採用されてきたものだ。
MQBは英語で「モジュラー・トランスバース・マトリクス」とも呼ばれ、エンジンを横置きする前輪駆動車向けの構造として知られている。プラットフォーム主導のアプローチはMQBが初めてというわけではないが、トレンドの始まりとなったことは確かだ。今では、新型EVとともに新しいプラットフォームが登場することが恒例になっている。
ところで、「プラットフォーム」と似たような意味で「アーキテクチャ」という表現が使われることもあるが、厳密に言えば同一のものではなく、わずかな違いがある。プラットフォームは、ボディアンダーフレーム、シャシー、パワートレインを共有するが、アーキテクチャは、同じ部品設計、戦略、および製造工程を共有する。そのため、1つのアーキテクチャから、セダンとSUVのように複数のプラットフォームが生まれることもある。
ボディパネルなどの部品を標準化しても、すべてのモデルが同じサイズになったり、キャラクターが重複したりするわけではないが、共通部品の製造および組み立ての効率が向上し、生産ラインを新設しなくてもよくなる。そのメリットは明らかであろう。
フォルクスワーゲンではMQBが有名だが、ジャガー・ランドローバーがジャガーXE、XF、Fペイス、レンジローバー・ヴェラールに採用したアルミニウム・アーキテクチャ「D7a」も同様のシステムである。
自動車のように複雑な機械の製造では、ソフトウェアと同じように、物理的な「バグ」が生じる可能性がある。したがって、試行錯誤を経た主要コンポーネントを使用して自動車を組み立てるというのは、やっつけ仕事などではなく、むしろスマートでエレガントな方法なのだ。
理論的には、開発チームのリソースをタスクの山から守ることができる。エンジニアは既存コンポーネントの問題を修正するよりも、新しいアイデアに集中することができるようになるはずだ。
こうした基本構造は、ほとんどの顧客が目にすることはないし、おそらく興味も持たないで部分あろう。例えば、MQB車のエンジンが12度後ろに傾いていることや、吸気側が常に前、排気側が常に後ろにあることを気にする(あるいは知る)オーナーがどれだけいるだろうか。
しかし、アーキテクチャが柔軟なため、個々のキャラクターをより明確にすることができる上、MQB以前のモデルより50kg軽量化されたことで低燃費を実感して、最終的に評価につながるかもしれない。
EVが絶え間なく進化する中、アルミニウム合金と軽量高強度鋼を組み合わせたモジュール式軽量アーキテクチャで過去10年間に得られた経験は、着実に還元されつつある。
フォルクスワーゲン・グループは、MQBから学んだことをすべてモジュール式電気駆動マトリックス「MEB」に注ぎ込み、EVでさらなる知見を得ようとしている。
EV専用アーキテクチャは、電動ドライブトレインならではのパッケージング効率を最大限に生かし、室内空間を最大限に活用し、バッテリーの余分な重量を可能な限り相殺するように設計されている。このようなアプローチなしに、EVの性能向上を目指すことは難しいだろう。
画像 スポーツカーからSUVまで幅広く採用【フォルクスワーゲン・グループのMQB車(一部抜粋)を写真で見る】 全110枚