水素エンジンのラリーカー トヨタGRヤリスH2、WRC出走へ 未来のゼロ・エミッション車?

公開 : 2022.08.17 06:45  更新 : 2022.11.01 08:56

水素燃焼エンジンを搭載したトヨタのコンセプトモデル、GRヤリスH2が今週末にベルギーで開催のWRCにてデモランを披露することが明らかになりました。従来の1.6L 3気筒エンジンを改造した水素技術に注目です。

水素を燃やして走るホットハッチ

トヨタGRヤリスH2が、WRC(世界ラリー選手権)に出走することになった。このモデルは、四輪駆動のGRヤリスに、水素を燃料とする内燃機関を搭載したコンセプトモデルである。

GRヤリスH2は、8月19日から21日ベルギーで開催されるイープル・ラリーで、4度の優勝経験を持つユハ・カンクネンがハンドルを握ってデビューを飾る。

トヨタGRヤリスH2コンセプト
トヨタGRヤリスH2コンセプト    トヨタ

トヨタは最近、従来の1.6L 3気筒ターボエンジンを水素で駆動するように改造したカローラを、国内のスーパー耐久レースで使用するなど水素燃焼技術のテストを続けている。

トヨタによると、水素燃焼技術は、「既存の内燃機関のノウハウと製造投資」を活用できるため、比較的手頃な価格でゼロ・エミッションを実現できるという。

欧州部門のマット・ハリソンCEOは、水素技術を用いることで、「電動化なしで排出量をほぼゼロにすることができ、しかも、ファンが最も好むレーシングカーの特徴であるスピードとノイズを維持することができます」と述べている。

GRヤリスH2は、前述のカローラと同じユニットを搭載しており、標準仕様からの変更は最小限に抑えられている。また、燃料電池車のミライと同じ水素補給装置を備えている。

主な改造点は、エンジンブロックの強化(水素はガソリンよりも激しく爆発するため)、新しいバルブシート、噴射システムのアップグレードなど。パワートレインの開発責任者であるティエボールト・パケは、ガソリン車と「同等の効率」を達成できると見込んでいるが、性能の詳細はまだ明らかにされていない。

昨年末にGRヤリスH2コンセプトが発表された際、パケはAUTOCARに次のように語っている。

「振動と音を少し出してみました。静かな燃料電池技術に比べて、スポーツ走行ではクルマの音や感触が感じられることをアピールしたかったのです」

「そもそも、これはコンセプトです。スポーツを通じて課題を見つけ出し、どのようにして技術の改良につなげるかを考えています」

GRヤリスH2が市販化される可能性については不明だが、ハリソンCEOは、この技術がゼロ・エミッション車を「必ずしも遠い未来ではない」ことを意味するものだと述べている。

彼はこう語った。「GRヤリスH2は、ゼロ・エミッションの未来でも、今と同じようにエンジンの楽しさを味わえるんだというメッセージを携えています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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