最新オールシーズンタイヤ事情 次なる一手は? グッドイヤーが「ベクター4シーズンズGEN-3」投入

公開 : 2022.08.18 09:45  更新 : 2022.12.29 21:15

2022年は、オールシーズンタイヤ市場に新たな動きが。日本グッドイヤーの新シリーズをテスト。ウインター性能、市場の動向をレポートしましょう。

2019年 国産メーカーが続々参入

2016年ころから、日本のタイヤ市場でもオールシーズンタイヤが一般に認知されるようになってきた。

選べるほどの種類はなかったが、グッドイヤーのベクター4シーズンズ・ハイブリッドが日本向けのサイズ展開を増やし、この市場の“開墾”を始める。

国産タイヤメーカーがオールシーズンタイヤに続々参入してから3年。現在は、グッドイヤーとミシュランが新製品の投入に積極的。写真は、前者のベクター4シーズンズGEN-3を履くジャガーEペイス。
国産タイヤメーカーがオールシーズンタイヤに続々参入してから3年。現在は、グッドイヤーとミシュランが新製品の投入に積極的。写真は、前者のベクター4シーズンズGEN-3を履くジャガーEペイス。    宮澤佳久

その後はミシュランが、2019年には多くの国産タイヤメーカーが、日本向けのオールシーズンタイヤを発表。

首都圏で雪が積もらない冬が続いたこともあり、今では量販店のタイヤコーナーに全天候型銘柄の展示スペースを見かける機会が増えた。

今年はとくに面白い。

このカテゴリーの市場を牽引してきたグッドイヤーが、オールシーズンの新製品として「ベクター4シーズンズGEN-3(ジェン・スリー)」を日本導入している。

取材班はこの冬に、正式発表前の新タイヤとして雪のなかを試乗した。

同じ条件で乗り比べ 何が違う?

会場にはこれまでのベクター4シーズンズ・ハイブリッド(以下、既存品)も用意され、同じコースを同じ車種で走り比べることができた。

既存品が一般的なユーザー層を担うのに対し、GEN-3はプレミアム・ゾーンの製品という位置づけだ。違いが分かりやすかったのは定常円での旋回。

同じ車種で乗り比べると、既存品とGEN-3の違いは定常円旋回のテストで分かりやすかった。GEN-3は、速度を上げていき、円周から外れそうになる時のコントロール性に優れる。
同じ車種で乗り比べると、既存品とGEN-3の違いは定常円旋回のテストで分かりやすかった。GEN-3は、速度を上げていき、円周から外れそうになる時のコントロール性に優れる。    宮澤佳久

既存品では、同じ旋回半径(スロットル一定)で周っていても、増し踏みしていくとクルマが円周から外れて外側に飛び出そうとする。

取材班の技術では、あらぬ方向に進んでいくのをブレーキペダルを頼りに停めるしかなかった。

GEN-3では、増し踏みしていくと既存品の車速を超えて周回できる。

やがて円周から外れるのだが、スロットルペダルを戻せばグリップを回復していき、大回りになる程度で済む。

この差は、非常に大きい。

「怖い」の感覚が“解けて”いく

取材日は日が高くなるにつれて氷雪が解け始め、コースを外れると雪の表面を水膜が覆っているところも。そこまでクルマが飛び出してしまうと、もうコントロールするのは困難。

GEN-3なら円周から外れる挙動を感じ取った際に、スロットルペダルをすっと戻すだけで車速が落ち、進むべきラインを維持することができる。

サイドウォールに「GEN-3」の刻印があるのが新製品。3つの山が重なるような形のスノーフレークマーク(シビアスノーマーク)は1年を通して、1つのタイヤで走り続けることができるタイヤの証だ。
サイドウォールに「GEN-3」の刻印があるのが新製品。3つの山が重なるような形のスノーフレークマーク(シビアスノーマーク)は1年を通して、1つのタイヤで走り続けることができるタイヤの証だ。    宮澤佳久

そんな回避策が1つ手の内にあるだけで、恐怖心・戸惑いばかりの雪道だって自分のペースで運転に集中できるから心強い。

GEN-3は、どこが変わったのだろう。

タイヤの表面を覗くと、トレッド面の中央に細かな切れ込み(サイプ)が無数に刻まれている。これが雪を掴むわけだ。

横方向、斜め方向へと入り交じるサイプの交差点は広がる仕組みになっており、掴んだ雪をタイヤが回転する動きの中でスムーズに排雪する。

ブロックの剛性を高める構造も取り入れ、雪路のハンドリング性能もアップした。耐摩耗・ウェット走行・静粛性を向上する技術も採用されている。

またGEN-3は、高インチ・サイズを揃えるので輸入車ユーザーも選びやすいし、SUV用となる「GEN-3 SUV」もラインナップされた。

ドライバーの視点で見れば、選べるオールシーズンタイヤの顔ぶれが広がったと思えばいい。

記事に関わった人々

  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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