らしさ満点のファミリーカー シトロエンBX 英国版クラシック・ガイド 見えない錆にご注意 前編
公開 : 2022.09.04 07:05 更新 : 2022.09.04 12:53
1980年代のシトロエンを救ったBX。スタイリッシュで個性的、実用的なクラシックを英国編集部がご紹介します。
シトロエンらしさ満載のファミリーカー
フォード・シエラへ並ぶ空力特性に軽い車重、アシスト付きのディスクブレーキ、車高を調整できるハイドロニューマチック・サスペンション。BXは、秀でた乗り心地を備える先進的なモデルとして、シトロエンらしさ満点のファミリーカーだった。
パッケージングも素晴らしく、比較的コンパクトなボディサイズながら、ライバル以上にゆとりのある乗員空間と荷室を確保。シトロエンがPSAグループの一員になったことで、エンジンも先代モデルのようにドライバーをがっかりさせることはなかった。
初期のBXで特徴といえたのが、オリジナリティの高いメーターパネルやダッシュボードの操作系。数字の記された円柱が回転するスピードメーターと、横に細長いレブカウンターは、他のモデルでは見られないようなものだった。可読性は別として。
もっとも、そのメーターの評判は良くなかった。1986年にマイナーチェンジを受けたMk2以降は、一般的なダイヤル式メーターに置き換わっている。
現在の英国には約1300台のシトロエンBXが生き残っていると考えられるが、実際にナンバーを付けて公道を走れるクルマは遥かに少ない。その殆どがディーゼルエンジンであるようだ。
日本でも選択肢は少ないため、懐かしのBXをこの機会に、とお考えの読者はグレードやエンジンなどにはとらわれない方が良いだろう。状態の悪くないBXが出てくるまで、短くない期間を待つことも想定しておきたい。
プジョー205GTiと共有の活発なエンジンも
シトロエンは、11年の販売期間に62種類ものBXのバリエーションを英国市場へ投入している。中古車として流通するBXは、それぞれ異なると考えて良いだろう。
シトロエンは、CXのターボDでディーゼル時代の幕を開いた。当初のBXには、PSAグループによって開発された自然吸気の1.9L 4気筒ディーゼルが載っていた。市場をリードする能力を備え、燃費は17.7km/Lと多くの家族に優しいものだった。
パワーステアリングがオプション設定され、比較的重たいエンジンがフロントに載る操舵性を助けていた。1988年にはターボで過給されるようになり、経済性と動力性能との両立が図られている。
ガソリンエンジンでは、プジョー205 GTiなどと共有する活発なユニットをGTiに採用。サスペンションも改良を受け、ホットな走りを求めるドライバーに応えた。
「GTiの登場で、シトロエンは現代の量産車らしい優れたシャシーを提供するようになりました。ゆったり流れるような身のこなしを失うことなく、操縦性の精度を高め、路面の追従性を一層高めています」。と、当時の自動車誌は讃えている。