EV用バッテリーは修理可能? 故障・劣化した部品は直せるのか 新しい内部構造のメリット
公開 : 2022.08.24 18:05
EVの駆動用バッテリーが故障しても、メーカーによる交換や修理は可能です。新技術とメンテナンス体制により、バッテリー修理のハードルは以前より下がりつつあります。
新技術によりバッテリー修理が簡単に
EVの普及であまり語られないのが、高電圧バッテリーが早期に故障した場合のことだ。
実は、故障したモジュールを新品と交換することで、バッテリーの修理は可能である。しかし、日産やBMWといった、初期にEV市場へ参入したメーカーでさえ、老朽化による容量低下は予測できるものの、交換が必要になるのは極めて稀なケースであることが分かっている。
それでも、EVにおいてバッテリーの修理は可能なものでなければならない。例えばポルシェは、2025年までに新車販売の半分を完全電動化し、2030年までに80%に増加させることを見込んでいる。そのため、設計段階から高電圧バッテリーをどのように修理するかを検討してきた。
必要なのは、可能な限りシンプルな設計にすることである。ポルシェ・タイカンのバッテリーケーシングは、28個または33個のモジュール(容量によって異なる)にアクセスできるよう、開閉可能になっている。モジュールに不具合が生じた場合、サービス工場で電圧を比較する診断テスターを使い、問題を特定する。低電圧の場合、そのモジュールに問題があると判断され、新しいモジュールに交換される。
また、使用済みのバッテリーは、自動車を動かすことはできなくても、別の用途にあてがわれる。これは多くのEVメーカーも同様で、大抵は据え置き型バッテリーとして第二の人生を歩むことになる。しかし、ポルシェの場合、単に車体からバッテリーを取り出して据え置き型システムに組み込むのではなく、モジュールレベルまで解体し、個々のモジュールを据え置き型の「エネルギーキャリア」に設置する計画である。
ポルシェはこの新技術にあわせてサービスネットワークを整備し、高電圧(HV)サポートセンターの設置などによりバックアップ体制を充実させる。また、自宅や外出先など、その場でバッテリーを修理する「フライングドクター」による対応も可能だ。
フォルクスワーゲン・グループのバッテリーセル戦略は、多くのセルを内蔵したモジュールから「セル・トゥ・パック」、そして「セル・トゥ・カー」へと移行するが、これがバッテリーの修理にどのように影響するかはまだ明らかではない。前者はモジュールを介さずに個々のセルでパックを構成するもので、後者は長方形の統一セルをカセットのように自動車の構造体に直接設置するというもの。
フォルクスワーゲンは7月、「グローバルなバッテリービジネスに参入する」と発表し、新会社「PowerCo」を設立。ドイツ・ザルツギッター工場にバッテリーセルを製造する新施設を着工した。
このように、新しい内部構造とメンテナンス体制により、故障または劣化したバッテリーの修理は手軽なものになりつつある。ポルシェは、EVのメンテナンスは従来のモデルより3割ほど容易であると見込んでいる。