合成燃料の可能性は? マツダも参戦 地球規模で石油の代わりになり得るか

公開 : 2022.08.30 18:05

自動車の電動化が進む中、合成燃料への注目度も高まりつつあります。既存の内燃機関を変更することなく、また食料生産と競合することなくCO2ニュートラルを目指せる「未来の燃料」は実現するのか。

液体燃料に残された可能性

社会を動かす要素として、人間性(一番楽な道を選ぶ)と経済性(一番儲かる道を選ぶ)の2つを挙げることができる。特に、地球温暖化など世界的な問題に対しては、その傾向が顕著だ。

自動車の電動化は、人間性も経済性も満たしてしまうものだが、内燃機関を捨てるという早まった決断により、重要なキーを見落としているのではないかという疑問が生じる。

バイオディーゼルを使用したマツダ2のレーシングカー
バイオディーゼルを使用したマツダ2のレーシングカー

石油会社は、エネルギー源の移行により大きな損失を被る可能性がある。彼らは石油製品の掘削と生産に関する専門知識や資源を握っているかもしれないが、他のエネルギー源については必ずしもそうとは限らない。しかし、カーボンニュートラルな合成燃料であれば、全く新しいインフラを構築することなく、既存のガソリンスタンドで販売することができるため、投資する価値はある。

専門家は何年も前から、物流で発生するCO2を削減する最も早い方法は、既存の自動車に使用できる持続可能でカーボンニュートラルな合成液体燃料に切り替えることであると述べてきた。内燃機関を変更・改造することなく使用できるものは「ドロップイン燃料」と呼ばれ、エタノールを大量に添加したガソリン(E3、E10など)とは異なり、デメリットが少ない。

もし、世界中の自動車が有機物質から合成された燃料を利用できるようになれば、物流や人の移動に由来する大気中の二酸化炭素は大量に削減できるだろう。

フォルクスワーゲン・グループは、数十年前から合成燃料の開発を進めてきた自動車メーカーの1つだ。最近ではポルシェがモータースポーツ用にプロジェクトを立ち上げたが、日本のマツダも大きな関心を寄せている。昨年、マツダは自動車メーカーとしては初めて、欧州の合成燃料関連団体「eFuel Alliance」に参加した。

ポルシェと同様、マツダも合成燃料の開発と普及を促進するため、サーキットに足を運んでいる。マツダの場合、ガソリンエンジンではなく、1.5Lのディーゼルエンジン「スカイアクティブD」を使用して、マツダ2を走らせている。

燃料には、パートナー企業であるユーグレナの合成燃料「サステオ」を採用。その原料は使用済みの食用油(90%)と、微細藻類のミドリムシ(学名:ユーグレナ)から抽出した油脂で構成されている。植物油を使うからといって、揚げ物のような匂いで走り回るわけではない。植物油から合成ガソリンや合成軽油を作ることができるのだ。

また、植物は成長の過程で大気中の二酸化炭素を吸収するため、CO2ニュートラルである。しかし、今後は藻類を原料にしたものに全面的に移行することを目指している。農業に適さない土地でも栽培でき、食料生産と競合することもない。

とはいえ、世界中で消費されている石油を代替するには、かなりの量が必要だろう。自動車用のガソリンや軽油は、世界で1日約13億ガロン(約49億L)消費されているが、植物油の場合は約1400億ガロン(約5300億L)である。そう考えると、藻類から既存の内燃機関を動かすのに十分な量の液体燃料を生産するというアイデアは、それほど突飛なことではないように思われる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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