ポルシェ718ケイマン RS 比較試乗 メルセデスAMG SLSxBMW M3 GTS 純な運転の喜び 前編

公開 : 2022.09.10 09:45

ポルシェがケイマンに設定したハードコアなRS。約10年前のAMG SLSとM3 GTSとの比較で、英国編集部が最新の実力を探ります。

中央部から放たれる見事なシンフォニー

コードネーム982型の718ケイマンと718ボクスターは、エンジンのダウンサイジング化やエネルギー効率にフォーカスされていた。2016年の発表当時、ミドシップされていたのは水平対向4気筒ターボだった。

しかし、今回試乗した718ケイマン GT4 RSには、激しく高回転域まで吹け上がる4.0L水平対向6気筒の自然吸気エンジンが載っている。だいぶ方向性が変わったように思える。バッテリーEVへシフトする前の、ポルシェ渾身の内燃ユニットといっていい。

イエローのポルシェ718ケイマン GT4 RSと、ホワイトのメルセデスAMG SLS ブラックシリーズ、オレンジのBMW M3 GTS
イエローのポルシェ718ケイマン GT4 RSと、ホワイトのメルセデスAMG SLS ブラックシリーズ、オレンジのBMW M3 GTS

ついに英国の公道へ、特別な718ケイマンが舞い降りた。クルマ好きなら、一度は生で見て聞いておくべきモデルの1台といえる。

4.0Lフラット6は、輝かしいポルシェ911 GT3から譲り受けたもの。最高出力は、少し気づかうように500psへ設定された。史上最高の内燃ユニットに数えられると同時に、718ケイマンでは別の味わいも醸し出されている。

全身の感覚を蘇らせる、911 GT3とは一味違う鮮烈な体験を与えてくれる。騒音計で測ってみたところ、9000rpmで109dBという凄まじいボリュームであることもわかった。一般的に、よほどのスーパーカーでも90dBを超えることはない。

ボディの中央部から放たれるサウンドは多彩。様々な音が重なり合い、機械が構成する交響楽団のよう。見事なシンフォニーを奏でる。

内燃ユニットの息使いを濃く体験できる

エグゾーストノートの上昇とともに高まる、ターボチャージャーの明確なタービン音はポルシェとして異例。ロッカーアームや、シフトパドルを弾く度に鳴るデュアルクラッチATの金属音も、素晴らしい音響体験を盛り上げてくれる。

キャビンの後方、ドライバーの上部にはカーボンファイバー製のインダクションシステムがそびえる。耳の直後で勢いよく空気を吸い、エンジンへ送り込み、シュゴーッと盛大に響く。エンジンの燃焼音も共鳴しているようだ。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(英国仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(英国仕様)

内燃ユニットの荒々しい息使いを、ここまで生で濃く体験できるモデルは極めて貴重。スリリング極まりない。これほどメカニズムの存在が直接的に伝わってくる公道モデルは、他には簡単に思い浮かばない。

そんな濃厚な感覚へ釣り合うように、動的能力や存在感も極めて高い。見た目は、まさにレーシングカー然としている。

ただし、比較対象がまったくないわけではない。同じ舞台に並べるべく過去の特別な例からチョイスしたのは、2013年のメルセデスAMG SLS ブラックシリーズと、2009年に追加されたE92型のBMW M3 GTSだ。

ブラックシリーズは究極のSLSと呼べ、右ハンドル車は15台しか製造されていない。BMWは、右ハンドルのM3 GTSを10台しか販売しなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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