四輪駆動で428psの強力クロスオーバー 新型スマート#1 ブラバスへ試乗 航続399km

公開 : 2022.10.17 08:25

四輪駆動で428psの強力クロスオーバー 新型スマート#1 ブラバスへ試乗 航続399km

ツインモーターの四輪駆動で最高出力428ps

思い切って過去のイメージを脱ぎ去った、新しいスマート#1(ハッシュタグ・ワン)。その最上級グレードとなるのが、#1 ブラバスだ。ドイツのチューニングメーカー、ブラバスを名乗るモデルなだけあって、過剰なほどのパワーを備えている。

シャシーの前後に駆動用モーターを搭載し、四輪駆動で最高出力428psを発揮すると聞いても、ブラバスなら納得というクルマ好きもいらっしゃると思う。最大トルクは55.2kg-mもある。

スマート#1 ブラバス(欧州仕様)
スマート#1 ブラバス(欧州仕様)

ただし、過度な期待はしない方が良いかもしれない。そのブランド名から想像するような、息を呑むほどの動的能力の磨き込みは得られていない。正直なところ、控えめにも磨かれたような印象は受けないかもしれない。

といっても、この#1 ブラバスを否定するつもりはない。筆者は間違いなく運転を楽しめた。丸みを帯びたデザインの可愛らしい容姿でありながら、乾燥したアスファルトでも、フルアクセルではタイヤ4本を空転さようとするパワーが放たれるのだから。

一方で、ツインモーターによる溢れんばかりの馬力とシャシーの操縦性が、完全には調和できていない。まだもう少しの開発期間は残されているようだが、バランスが取れていないと表現したいほど。

効果的に展開されない大パワー

後輪駆動で271psのスマート#1 プレミアムの試乗レポートを先日ご紹介したが、馬力以外で#1 ブラバスが得た変化は大きくない。フロントに156psを発揮する2基目の駆動用モーターが搭載されるが、それが走りへ効果的に展開されているとはいえないだろう。

スマートの技術者によれば、ツインモーター化で増えた重さに対応させるため、サスペンションにも調整を施したという。#1 プレミアムはソフトで大人しい設定といえたが、明確に引き締められたわけではない。

スマート#1 ブラバス(欧州仕様)
スマート#1 ブラバス(欧州仕様)

大幅にパワーアップしていながら、履いているタイヤはコンチネンタル・エココンタクト6という、エコ重視なもの。加速時の太いトルクには耐えきれず、コーナリング時に掛かる負荷も受け止めきれない。

パワー任せにハイスピードでコーナへ侵入しようとしても、サスペンションが腰砕け。低い速度域でもアンダーステアが顔を出してしまう。

それをなだめつつフロントノーズの向きを変え、アクセルペダルを傾けていくと、リアの駆動用モーターがフロントより多くのトルクを放出。シャシーバランスが変化する。パワー・オーバーステアに持ち込めそうな気配はある。

ところが次の瞬間、スタビリティ・コントロールが容赦なく介入。テールスライドを維持できそうなパワーは、強制的に直進方向へ戻すように展開され、一層アンダーステアが強まってしまうようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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