自動運転を加速させる「ロード・シグネチャー」技術 ボッシュの位置情報システムとは
公開 : 2022.09.29 18:25
自動運転に欠かせない技術として、位置情報システムがあります。デジタル地図を作成し、車載のセンサーと連携して自動運転の精度を高めるもので、ボッシュなどが開発を進めています。
自動運転の開発を加速させるデジタル地図
自動運転車の技術というと、カメラやLiDAR、超音波センサーといったハードウェアのイメージが強いが、ボッシュはデジタル地図も一種のセンサーであると言う。高解像度のデジタル地図に含まれる情報は、車載センサーの検出範囲をはるかに超えているのがポイントだ。
ボッシュは今年、デジタル地図を手掛けるアトラテック社を買収した。同社はライブデータを収集するためのハードウェアとソフトウェアを独自に開発した企業である。AIがそのデータを分析し、標識の詳細、構造的特徴、カーブのきつさなど、特定の情報を加えて補強する。AIは、継続的に学習することで道路の特徴や環境に関する理解が深まり、車両が自らの現在位置を特定できるほど高精度の情報を構築できるようになる。
今年の初めには、フォルクスワーゲンが車線維持などの先進運転支援システム(ADAS)の能力を高めるために、スウォームデータ(多数のクルマから収集し、共有する群データ)を活用しているというニュースがあった。また、ボッシュは昨年からフォルクスワーゲンと共同で、高解像度地図の開発や改良に利用できるリアルタイム情報の収集にも取り組んでいる。
そこで登場するのが、自動運転のエンジニアの間で「ローカライゼーション」と呼ばれている、車両自体が自車の正確な位置情報を人間のドライバーと同じ精度で把握する能力である(少なくとも、「理論上は」の話)
ボッシュは、フォルクスワーゲン・ゴルフ8が匿名で収集したデータを使って、「ロード・シグネチャー」なるものを作成。データはフォルクスワーゲンのクラウド上(または他の自動車メーカーのクラウド)に送られ、ボッシュのクラウドと共有されて、多層構造の高解像度マップが更新される。
ボッシュはこのデータを、物理的な実環境のデジタルツイン(双子の兄弟)と呼んでいるが、クラウドに送られるのはあくまで地図の改善に必要な情報だけであるという。
各車両は、車載センサーで周辺環境を検知・分析し、デジタルツインが持つ画像と照合する。ボッシュによると、これによって道路上の自車の位置を数十cm(おそらく0.5m以下)単位で正確に特定できるようになるという。最終的な位置特定と障害物回避は、車載のセンサーと制御システムが担う。これにより、視界の悪い場所でも正確な位置確認が可能になるはずだ。
このように、自動運転に関する技術開発は各方面から進められているが、だからといって近い将来、完全なる自動運転車が突然登場することはないだろう。当初は物流業界での利用が想定され、自動運転トラックや、ラストワンマイル配送のための自動運転バンなどが登場する可能性がある。