走りながら大気中のCO2吸収 オランダの学生が製作した電動スポーツカー「Zem」とは
公開 : 2022.10.03 19:25
オランダのとある工科大学の学生チームは、大気に含まれる二酸化炭素を走行中に吸収するEVを開発しました。二酸化炭素を車内に蓄積する特殊なフィルターを搭載した、スポーティな2ドア・クーペです。
走りながら二酸化炭素を吸収・蓄積
走行中に二酸化炭素を排出しないゼロ・エミッション車に世界的な注目が集まっているが、大気中の二酸化炭素を除去する「マイナス・エミッション車」と呼ばれるものも存在する。
オランダのアイントホーフェン工科大学の学生チーム「TU/ecomotive」は、「Zem(ゼム)」というEVの試作車を開発した。スポーティなスタイルの2ドア・クーペで、二酸化炭素を吸収する特殊なフィルターが内蔵されている。
TU/ecomotiveによると、約2万マイル(約3万2000km)の走行で最大2kgの二酸化炭素を取り込むことができるという。吸収された二酸化炭素は、車内に蓄積された後、廃棄・処理される。
このフィルターを搭載した自動車1台が大気中から除去できる二酸化炭素の量はわずかだが、10台になると一般的な木と同じ量の二酸化炭素を蓄えることができるという。世界中のすべての自動車にこのフィルターが取り付けられたとしたら、大きな違いが出るだろう。
さらに、TU/ecomotiveのチームマネージャーであるルイーズ・デ・ラートは、「今後数年でフィルターの容量を増やすことができるのは、すでに見えています」と述べている。フィルターは現在、PoC(概念実証:実現可能性を検証)の段階にあり、学生たちは特許を申請しているところである。
また、車両の充電中にフィルター交換を行えるシステムの開発を目指している。
フィルターだけでなく、生産工程においても可能な限りカーボンニュートラルを実現できるよう取り組んでいる。モノコックとボディパネルは、使用後に破砕してリサイクルできる循環型プラスチックを採用し、3Dプリントによって廃棄物を最小限に抑えて製造する。
また、外部機器に電力を供給できるよう双方向充電が可能な設計になっているほか、移動中も充電ができるようソーラーパネルが搭載されている。
TU/ecomotiveがこのようなコンセプトカーを作るのは、今回のZemで7台目。2013年のシェル・エコマラソン用に開発した「Penny」が最初の作品だ。
最近では、2020年にペットボトルなどのリサイクル廃棄物を自動車生産に利用するというコンセプトを基に「Luca」を製作。その前には、生産、使用、リサイクルにおいて持続可能であるように設計された「完全循環型自動車」である「Noah」を発表している。