ポルシェ356がもう買えない! オークションで高額落札連発 この夏、急激値上がりのワケ

公開 : 2022.10.10 05:45  更新 : 2022.10.11 11:55

夏の海外オークションでポルシェ356 4台が高額落札されました。急激に値上がりした背景を解説します。

ポルシェの歴史は356から

ポルシェの名声を確立させたモデルといえば356だ。独創的なメカニズムで構築された356は、常に最高の性能を追い続け、高いパフォーマンスを1950年代に確立していた。

基本の完成度が高いポルシェ356は、現代の路上でも乗れる扱いやすさと信頼性の高さが特徴といえる。そのため日常で乗れるクラシック・ポルシェとして支持されてきた。

ポルシェ356は普段づかいもできるクラッシック・ポルシェとして支持されてきた。
ポルシェ356は普段づかいもできるクラッシック・ポルシェとして支持されてきた。    グッディング&カンパニー/Brian Henniker

また生産台数が多いこともあり、4カム(DOHC)エンジンを積むGS/カレラ2と356を象徴するスピードスター以外は、以前は手頃な価格で買えることが美点だった。

パーツも手に入れやすく、空冷エンジンということとシンプルな構造から(4カムモデルを除く)もあり、メンテナンスが楽なことも人気を集めるポイントといえる。

そのため最近の各地で開かれているクラシックカー・ラリーには、ポルシェ356が大挙してエントリーしており、このことからも人気の高さが窺い知れる。

356のバリエーションは?

ポルシェ356を大きく分けると、プロトタイプ、初期型、プリA、Aシリーズ、Bシリーズ、Cシリーズに分類できる。量産型のボディはクーペ、カブリオレ、スピードスターが用意された。

マーケットに出てくるのはAシリーズ以降で、量産されたBシリーズとCシリーズが中心になっている。ちなみにプリAからCシリーズまでの生産台数は7万7895台となる。

ポルシェ356Aスピードスター
ポルシェ356Aスピードスター    グッディング&カンパニー/Brian Henniker

356オーナーにとって憧れのスピードスターはプリAとAシリーズのみに設定され、プリAで200台、Aシリーズで1243台が製作されるに留まる。

2014年からのバブル期の相場は、スピードスターが3000万円程度、GS/カレラ2は356ファミリーの中でも別格で5000万円から1億円と高額で落札されている。

タマ数の多いB・Cのクーペは、10年前なら300万円(時にはそれ以下!)で買えたが、その後のコレクターズカー・バブルにより値上がりして1000万円に達した。

またスピードスターに憧れはあるものの、手が届かない層に人気のあるカブリオレも、356人気と比例して次第に値上がりして1500万円がアベレージになってしまう。

4台高額落札 高騰のワケ

8月のグッディング・ペブルビーチ・オークションには、4台のポルシェ356が出品され、すべてが高額で落札された。その4台の詳細を見てゆこう。

1956年356Aスピードスター

人気のAスピードスターは2年にも及ぶレストア完成後に僅か160kmしか走行していないバリもの。コンディションが評価され47万ドル(6439万円)と以前の倍で落札された。

1956年356Aヨーロピアン・カブリオレ

オークションに出品された1956年356Aヨーロピアン・カブリオレ
オークションに出品された1956年356Aヨーロピアン・カブリオレ    グッディング&カンパニー/Erik Fuller

オリジナル・カラーのアクアマリン・ブルーのAカブリオレは、レストアに37万5000ドル(約5138万円)かけた個体。最終的に驚きの39万ドル(約5343万円)で決着。

1958年356A 1500GS/GTカレラ・スピードスター

356の人気アイテムがすべて揃ったマニア垂涎といえる極みの1台。予想落札額の140~180万ドルには届かなかったが、妥当といえる120万ドル(約1億6440万円)を記録した。

1965年356SCカブリオレ

一昔前までは手頃に楽しめる存在だった356SCのカブリオレにも高騰の波が押し寄せ、なんと21万ドル(約2877万円)にまで高騰してしまった。

このようにポルシェ356は、滋味ある乗り味と真価が評価されたようで、今やスーパーカー並みの額で落札されている。また日本から見ると円安で約2割も上がってしまった。

これからポルシェ356を手にしたい、と考えてる日本のファンにとっては、値上がりと円安のダブルパンチで、まさに悪夢といえる状況になってしまった。残念。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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