新世代の市民のクルマを長期テスト フォルクスワーゲンID.4 GTX(1) 強みの航続484km
公開 : 2022.10.23 09:45 更新 : 2023.01.13 14:58
日本でも販売が始まるVWのEV、ID.シリーズ。クロスオーバー「4」の実力を、英国編集部が長期テストで確認します。
初回 グランドツアラー寄りのGTX
新しいフォルクスワーゲンID.4は、バッテリーEV(BEV)のクロスオーバーへ求めるすべてを備えているように思う。不足ない航続距離に、先進的で広々としたインテリア、たくましいパワートレインなど。
長期テストへやってきたID.4は、GTX。通常のID.4とは一味違う動力性能が与えられている。内燃エンジン・モデルへ設定されるGTIで定評を築いてきたブランドなだけに、期待は自ずと高まる。
ただし、GTXは従来のGTIに相当するものではないと、フォルクスワーゲンは説明する。通常モデルより充実した装備が与えられ、四輪駆動であることを示す3文字なのだという。
GTIは、積極的に運転を楽しみたいドライバーのためのグレードといえた。一方のGTXは余裕を持って長距離をこなせる、グランドツアラー寄りといえそうだ。
ID.4 GTXのパワートレインは不足なくパワフルで、通常のID.4とは異なり、フロント側に2基目の駆動用モーターを備える。システム総合で299psの最高出力と48.0kg-mの最大トルクを発揮し、0-100km/h加速を6.2秒でこなす瞬発力を持つ。
ちなみに、競合モデルに当たるテスラ・モデルYは5.0秒、キアEV6 GTは3.5秒で到達する。ID.4 GTXが遅いわけではないものの、BEVとして際立つほど速いわけでもない。
最新のシャシー技術など装備は充実
外観的な部分で、GTXとしての差別化は限定的。ルーフがブラックのツートーンになり、専用のリアスポイラーを備え、ルーフレールなどがブラックアウトされる。大きなXのシルエットで灯るテールライトも専用設定だが、その程度だ。
テールゲートに貼られたGTXのロゴを見るまで、路上で違いに気付ける人は少ないだろう。長期テスト車のボディーカラーは、通常のID.4では選べないグレイシャー・ホワイト。これは、英国では685ポンド(約11万円)のオプションになる。
シャシー側では車高が15mm落ち、XDSと呼ばれる電子制御リミテッドスリップ・デフと、最新の車両ダイナミクス・マネージャー、VDMを搭載。マックス・グレードで、ダイナミック・シャシー・コントロール(DCC)ダンパーなど、追加装備も得ている。
知的なLEDマトリクスヘッドライトや、駐車アシスト機能付きのリアカメラ、キーレスエントリー、ワイヤレス・スマートフォン充電、アップル・カープレイなどは標準で備える。不足はない。
インフォテインメント・システムは最新版。長期テスト車には12.0インチと通常より1サイズ大きいタッチモニターが据えられるが、表示は鮮明なものの、使い勝手が良いとはいえないようだ。
車載機能の殆どは、タッチモニターかタッチセンサーを介して操作する。実際に押せるハードボタンはほぼなく、タッチセンサーにはイルミネーションが内蔵されないため、夜間は操作しにくかったりする。
ソフトウエアはアップデートされたバージョン3.0。この手の技術を余り得意としない筆者は、使いこなせるだろうか。