アルピナB8グランクーペ試乗 職人芸が薫るアルピナの頂点 同居する直進と旋回の妙

公開 : 2022.10.28 05:45

アルピナB8グランクーペに試乗。「超高級、驚速車」のオーラも消せる万能選手に宿る職人芸に触れます。

ハイエンドモデルの風情

BMWアルピナに抱くイメージは人それぞれ。

個人的には3シリーズベースの4ドアリムジンこそ、このエクスクルーシヴなメイクスの「定番」だと考えている。

アルピナB8グランクーペ
アルピナB8グランクーペ    アルピナ

筆者がアルピナに触れはじめた時期がE36の頃だったからというタイミング的なものもあるのかもしれない。

だが今回、B8グランクーペをドライブして、その考えが初めて揺らいだのである。

現行のB8グランクーペは4ドアクーペであり、ひと世代前はB6を名乗っていた。エンジンは4.4LのV8、ホットインサイド・ターボで最高出力は621psに達する。

トランスミッションは8速オートマティック。アルピナらしく表現するならスイッチトロニックで、一方パワートレインは現行アルピナらしくAWDとなる。

試乗車の外装は慣れ親しんだアルピナグリーンだが、インテリアは明るめの2トーン・レザー(フルレザーメリノ)でオーダーされており優雅な雰囲気。ステアリングはさらに上質なラヴァリナレザーでトリムされている。

周知の事実だとは思うが、アルピナは「ニュルで速くてナンボ!」みたいなライバルたちと比べると、レーシーからラグジュアリーまでのカバレッジが広めだ。

中でも最高峰に位置するB8グランクーペはラグジュアリー寄り。

だからこの明るい内装色は、クルマの性格を熟知している人の選択に違いない。

今回は街中と高速道路を半々で走る試乗コース。普段づかいからアルピナの真骨頂であるハイスピードまでチェックできるはずだ。

同居する直進と旋回の妙

居心地のいい室内と、扁平タイヤを感じさせない乗り心地。

アルピナの特徴の1つはゆっくりと走っているようなシーンで「超高級、驚速車」のオーラを消せるところだ。

アルピナB8グランクーペ
アルピナB8グランクーペ    アルピナ

だからスピードを出すまでウズウズが止まらない、みたいなことがない。

もちろん渋滞に出くわしたら、BMWの特権であるハンズオフのACCが楽ちんドライブを担保してくれる。

ホイールベースが3m超えと知って警戒していたのだが、後輪操舵が思った以上に上手く小まわりを実現してくれる。

後ろを振り返るとリアシートの足元がはっきり広いのもロングホイールベースのおかげ。

だがやはりアルピナの真骨頂は高速道路だった。

エンジンが唸るわけでもなく、風切り音がうるさいわけでもなく、いつのまにか流れをリードしている。

ビシッと直進し、ピッチングの類がほとんど感じられないのは、件のホイールベースとまるで「ちょっとエアサス」みたいに感じられる絶妙なレート設定のスプリングとダンパーの妙だ。

もちろんB8グランクーペは直進一辺倒な頑固者ではない。

インターチェンジのカーブなどではひらりと軽快なコーナリングも披露してくれる。

後輪操舵は低速時は大きく曲がる逆位相、高速では安定重視の同位相が常識だが、むしろ定常的にコーナリングしている場合には後輪が逆位相なのでは? と疑いたくなるくらい舵角が少なく、しかしシャープに曲がっていく。

二兎を追ってどちらも得る、走りの部分はまさに万能選手である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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