カーオーディオが変わる? 高音質&軽量の静電型スピーカーとは
公開 : 2022.11.02 06:25
英国の音響メーカーWarwick Acoustics社は、自動車用の静電型スピーカーを開発。薄くて軽量、省エネ、そしてクリアな音質を実現するとされています。
省スペース、省エネ、軽量かつ高音質
音響の世界では、静電型スピーカーは何十年も前から存在するもので、従来のコーン型スピーカーと比較して、クリアで歪みの少ない音質が注目されている。英国の音響メーカーWarwick Acoustics社は、この技術を自動車に応用し、スペース、重量、エネルギー消費を削減することに成功したという。
同社の「エレクトロアコースティック(ElectroAcoustic)」は、自動車の内装パネルにスピーカーを組み込んだもの。リサイクル可能な材料で作られ、レアアース(ネオジム磁石など)は使用していないとのこと。静電型スピーカーは、マグネット付きでかさばりやすいコーン型とは異なり、フラットなシート状になっているため、パネルや表面に組み込みやすいのだ。
従来のスピーカーは、ある形のエネルギーを別の形に変換するトランスデューサー(今回の場合は電気から音に変換)と、これに取り付けられたコーンで構成されている。
トランスデューサーは、一般的にドライバーと呼ばれ、永久磁石とボイスコイルと呼ばれる電磁可動コイルからなる。アンプからの電気信号が通過するとこれが動き、取り付けられたコーン(正しくはダイアフラム、振動板)も同時に動くことで周囲の空気を振動させ、わたし達が聞く「音」を作り出す。
永久磁石は、軽量化のためにレアアースを使うことがある。また、従来の鉄磁石よりも強力だ。
静電型スピーカーは、これとまったく異なるものである。3枚の薄いシートがサンドイッチのように密着していると想像してほしい。中央のシートは電荷を帯びており、アンプの信号はそれを挟む導電性のシート(静止しているためステーターと呼ばれる)に伝わる。これを受けて、中央のシートが従来のコーンのように動いて空気を振動させ、音を発生させる。
Warwick Acoustics社が開発した車載用スピーカーの場合、この可動膜の厚さはわずか0.015mmで、人間の髪の毛の約5倍も薄い。静電型スピーカーの利点はここにある。質量がほとんどないため、振動させやすく、アンプの信号に即座に反応する。一方、従来のムービングコイルスピーカーは、可動部が比較的重いため、動かすには慣性を克服する必要がある。
Warwick Acoustics社の「エレクトロアコースティック」は、ヘッドホン用の静電トランスデューサーから派生した技術を応用し、10年の開発期間を経て製品化に至った。パネルは、同社のエレクトロ・スタティック・トランスデューサー(EST)と、特別に設計されたエレクトロニクス・ドライブ・モジュールで構成されている。
ESTは、オープンセル(ハニカム)のスペーサーに張られており、音を伝える小さなドラムのようなものを形成する。セルの形状、サイズ、分布は、周波数応答(低音から高音までの音の周波数)と音の方向に影響を与える。
Warwick Acoustics社の主張通りにうまく機能すれば、持続可能性、重量、エネルギー消費の削減(したがってCO2削減)を実現しながら、プレミアムな音質も再現するという、夢のようなスピーカーに思えてくる。自動車メーカーとしても、内装デザインの幅が広がるはずだ。