見事な調律のFK8型 ホンダ・シビック・タイプR 過去10年のベストは? お手頃ドライバーズカー選手権(1)

公開 : 2022.11.12 09:45

気張らない価格で買える、最も運転を楽しめる1台を選ぶAUTOCAR恒例企画。2022年は趣向を変えて、過去10年の1番を選出しました。

過去10年のベスト・オブ・ベストは?

グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方に今日のメンバーが揃った。より少ない費用で、より多くの時間、より多くのドライバーが運転の喜びを感じられるベストな1台はどれだろう。

英国価格4万ポンド(約672万円)以下という縛りを設けて、AUTOCARが恒例としている企画が「英国お手頃ドライバーズカー選手権」だ。この土地の道を徹底的に攻め込みたいなら、ケータハム・セブンがベストかもしれない。しかし、少々間口が狭すぎる。

左からオレンジのマツダMX-5(ロードスター) 30thアニバーサリー・エディションと、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グレーのホンダ・シビック・タイプR GT、ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージ、グリーンのフォード・フィエスタ ST
左からオレンジのマツダMX-5(ロードスター) 30thアニバーサリー・エディションと、ホワイトのトヨタGT86(86) プロパッケージ、グレーのホンダシビック・タイプR GT、ホワイトのトヨタGRヤリス・サーキットパッケージ、グリーンのフォードフィエスタ ST

あいにく、今年は予定通り計画が進まなかった。主役になるであろうクルマの準備が、予定日へ間に合わなかった。新しいトヨタGR86だ。

主役不在で選手権を開催しても、意味が薄い。というわけで今回は、過去の勝者を揃えてベスト・オブ・ベストを選び出すことになった。過去10年間を遡り、その年のベストを並べて順位付けし、上位5台を直接比較していくという内容だ。

年末にお届け予定の「英国ベスト・ドライバーズカー選手権」なら、フェラーリポルシェがしのぎを削る。脳内を巡るアドレナリンの量も半端ないが、価格は数10万ポンド(数千万円)をくだらない。

その魅力を体験できる人は、ほんのひと握り。実際のオーナーでも、その能力を存分に発揮させられる機会は少ないはず。

筆者の前に並んでいる5台は、フォード・フィエスタSTと先代のホンダ・シビック・タイプR、マツダMX-5(ロードスター)、トヨタGRヤリス、初代トヨタGT86(86)という精鋭。いずれも手頃な価格で販売され、毎日運転できるクルマばかりだ。

見事に緻密で調律された操縦性

現代の高性能モデルにとって、優れた能力の引き出しやすさと普段使いのしやすさは、非常に重要な要素といえる。クルマに対する情熱にも影響してくる。今回抽出される1台は、いわばドライバーズカーの象徴的存在になるともいえるだろう。

それでは早速、過去10年での上位5台の乗り比べといこう。2017年にフォルクスワーゲン・ゴルフ Rを凌駕した、FK8型ホンダ・シビック・タイプRが秘めた「スピードやグリップ、活気や興奮で道路を呑み込んでいく」感覚は、今でも健在だろうか。

ホンダ・シビック・タイプR GT(FK8型/2017〜2021年/英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR GT(FK8型/2017〜2021年/英国仕様)

攻撃的なスタイリングと、望外に高い動的能力、隅々まで正解に感じるフィーリング。シビック・タイプRには新世代が登場済みだが、低い位置にセットされたバケットシートへ腰を下ろすと、自然と笑顔になってしまう。

ドライビングポジションから完璧。もし縦置きエンジンなら称賛ものだし、ファミリー・ハッチバックとしては、これ以上ないといえる。

低速域では、操作系のすべてに無駄が排除されていることを実感する。一般的な同クラスのホットハッチと比べると、手応えが確かで感触も豊か。速度の上昇とともに、鮮明さを増していく。

筆者はこのクルマの走り様が大好きだ。入力に対する反応や速度が、見事に緻密で調律されている。計り知れないほどの可能性を感じる。

素の状態の2017年式を、英国では手配できなかった。グレーのタイプRは310psから320psへパワーアップし、シャシーに改良が加えられたフェイスリフト後の後期型ではある。だが、FK8型は誕生時から素晴らしく、改良で得た変化は小さい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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