ドライ路面でもスケートリンクでも効く 最新スタッドレスタイヤ ブリヂストン・ブリザックVRX3を試す

公開 : 2022.11.06 05:45

スタッドレスタイヤの定番ブリヂストン・ブリザックの新モデル「VRX3」。ドライとアイス路面で実力を試しました。

定番スタッドレス「ブリザック」

ブリヂストンのスタッドレスタイヤといえば言わずと知れたブリザック。

同社が2022年の1~3月期に、第三者機関に無作為抽出で依頼した調査のデータによると、北海道や東北北部の主要都市での一般ユーザーの車両装着率は50.7%、札幌市のタクシーの装着率は77.2%にのぼったという。

スタッドレスタイヤの定番「ブリザック」のシェアは圧倒的。
スタッドレスタイヤの定番「ブリザック」のシェアは圧倒的。    宮澤佳久

もはやいち消費財の枠では測れない強烈な市場占有率だ。

ブリヂストンの方に話を聞くと、今やカスタマーの口コミ幅は同世代の知人友人のみならず、親子2代に受け継がれることになっているらしい。

とはいえコスト全般にシビアなタクシー業界にあって、決して安くはない銘柄がなぜこれほどの装着率なのか。

以前、現地の運転手さんに訊ねてみたら「うちらは手を上げたお客さんの前でとまれるかとまれないかの勝負ですからね」と仰せになる。

この認知の鉄板ぶりを知るにつけ、なんとか牙城の切り崩しを狙う他銘柄の側にむしろ同情の想いも抱いてしまう。

SUVもカバー 最新モデル「VRX3」

そのブリザックの最新モデルとなるのが昨秋に発売を開始したVRX3。

今年はSUV向けに12サイズを追加し、国内の主要モデルの大半をカバーすることになった。

VRX3はシティユースがメインのSUVユーザーに向けた商品とのこと。
VRX3はシティユースがメインのSUVユーザーに向けた商品とのこと。    宮澤佳久

ホットなところでは、クラウンクロスオーバーの21インチ装着グレード向けのサイズも用意されている。

そこで気になるのは、同じブリザックでもSUV専用と銘打って販売されているDM-V3との違いだ。

ブリヂストンの担当者いわく、DM-V3はどちらかといえば四駆ならではのヘビーデューティユースに焦点を当てていて、それを裏付けるようにジムニーランドクルーザーシリーズ用とおぼしきサイズのみならず、小径・高扁平のバリエーションも豊富だ。

対して、VRX3はシティユースがメインのSUVユーザーに向けて、必須の性能と総合的な快適性をより高めた選択肢としてサイズ展開を広げたというわけだ。

パターンや構造などはすでに販売されているものと一緒で、先代のVRX2に対しては特に氷結路のパフォーマンスやその継続ぶり、ロングライフ化による経済性向上といった性能項目を引き上げたという。当然ながらブリザックシリーズの中では最高性能を謳っている。

そのVRX3の性能を、今回の試乗では両極の場面で確認することになった。

ドライのオンロードで試す 実力は?

その一方はドライのオンロードというシチュエーション。イメージとしては冬支度のためにタイヤを履き替えたものの、思いがけず暖かい日々が続いているといった状況だろうか。

一般道を普通に走る限り、基本的な印象はサマータイヤとの差はほぼ感じられない。どころか、トレッド部の柔軟性が乗り心地側に効いて快適さは一層高まる傾向だ。

ドライ路面でも定常的な旋回では舵角もスッと一発で定まるなど、ドライバーの意思を忠実に反映してくれる仕上がりだったと筆者。
ドライ路面でも定常的な旋回では舵角もスッと一発で定まるなど、ドライバーの意思を忠実に反映してくれる仕上がりだったと筆者。    宮澤佳久

この辺の感触は多くのドライバーがスタッドレスタイヤを履いた際に感じるところだろう。

加えて、VRX3はノイズレベルの低さも持ち味の1つだ。

いわゆる冬用タイヤは構造由来とパターン由来でサマータイヤとは異なるロードノイズ環境になることは致し方ないが、VRX3はゴーやザーといった低音側のノイズが特に低速域でよく抑えられている。

そのぶん、40km/h前後ではヒュー系の高音側のノイズがわずかに耳につくところもあるが、程なく車両側の稼働音にマスクされて気にならなくなる。

操作に対する応答性という点ではどうか。

今回、ブリヂストンの開発拠点である小平技術センター内に新たに作られたテストコースでその感触を味わうことが出来た。

成り立ち上、重量が重く高重心になりがちなSUVにとって、ルーズな応答性は余計な不安感や不快感を抱くことになってしまう。

VRX3はその点においても性能の均一化が図られていて、実際、プリウスヤリス・クロス、Q3と車格も重心も異なる3つの異なるモデルで比べてみても、加速・制動・操舵での微小な入力で応答ズレなどを感じることはない。

スラロームの切り返しなどでもブロックの倒れ込みによる曖昧な動きはなく、定常的な旋回では舵角もスッと一発で定まるなど、ドライバーの意思を忠実に反映してくれる仕上がりだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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