走りながら有害物質を除去 アウディ 空気を綺麗にするフィルターとは
公開 : 2022.11.13 18:25
自動車が「走る空気清浄機」となる時代も近いかもしれません。アウディは、マン・ウント・フンメル社と共同で、空気中の有害な微粒子を吸収するフィルターの開発を進めています。
走る空気清浄機 大気汚染を軽減
トヨタなど一部の自動車メーカーは、クルマを移動式の「空気清浄機」のように仕上げ、大気中の微粒子を吸収するというアイデアを考案している。今回、アウディも同様のシステムの開発をスタートした。
アウディは、サプライヤーのマン・ウント・フンメル(Mann+Hummel)と共同で、電動SUV「eトロン」のラジエーター前方に微粒子除去フィルター「アーバン・プリファイア」を設置し、試験運用を開始した。
このフィルターは、エアダクトから流入したドライブトレイン冷却用の空気を浄化するものだ。空気に含まれる微粒子を捕捉しながら、ラジエーターに十分な量の空気を流すように設計されている。
この試験運用は2024年まで実施される予定だが、テスト車両はすでに約5万kmに及ぶ耐久テストを完了し、フィルターのサイズとその効果を確認したという。暑い日や充電中など、EVの駆動用バッテリーの健康状態を維持するためには温度管理が不可欠だが、このフィルターを装着しても航続距離やドライブトレインへの影響はなかった。
フィルターは、PM10(10マイクロメートル、0.01ミリメートル)の微粒子を捕集する。これは、かつて騒がれたディーゼルエンジンの微粒子と同じ大きさである。また、ブレーキダスト、タイヤの摩耗、路面の摩耗などで発生する微粒子も含まれる。
これまでのところ、フィルターを通過するこれらの微粒子は100%捕集できることが証明されている。一般的なエアフィルターなどと同様、定期的に交換する必要があるが、コンピューターによるシミュレーションでは、フィルターの全ライフサイクル(生産から使用、廃棄まで)において、14.9kgのダストを回収することができるとされている。
マン・ウント・フンメルは、この共同プロジェクトに先立って、独自にフィルターシステムの開発に取り組んでいた。同社が発表した2016年の統計(EU圏内)によると、交通に関連するすべてのダストのうち、27%がブレーキ、28%がタイヤ、33%が路面によるもので、排気ガスによるものはわずか12%に過ぎない。
同社はすでに、商用車のルーフや車体下部に取り付けられるフィルターシステム「ファイン・ダスト・イーター」を試験的に導入しており、渋滞などで停車しているときでもファンを使って空気を循環させることができる(アウディも同様)。テスト車両を使った試験から、このフィルターはガソリンエンジンやディーゼルエンジンが燃焼過程で排出する微粒子と同程度の量を、同時に空気中から捕集できることがわかったそうだ。
また、ブレーキダストを発生源で捕集するブレーキダストフィルターというものもある。これは、ブレーキディスクを囲うようなケーシング(形状は複数ある)によって、文字通りダストボックスとして機能する。ブレーキパッドやディスクの摩耗によって発生するブレーキダストをすくい上げ、集塵するのだ。
これまでの実走行テストでは、ブレーキから発生する微粒子を空気中にまき散らすことなく、80%をフィルターに保持させることができた。エンジニアによると、フィルターの清掃間隔はブレーキパッドの整備間隔と同じになるようだ。
排気ガスだけでなく、自動車から発生するさまざまな「ダスト」を自動車自ら効率的に回収する。いつか、そんなことが当たり前になる時代がくるのかもしれない。