現実的に楽しめる旧車 MGBロードスター 英国版クラシック・ガイド 目立つ弱点なし 前編

公開 : 2022.11.27 07:05

英国で最も売れたスポーツカー、MGB。運転が楽しく維持しやすいクラシックの魅力を、英国編集部がご紹介します。

現実的に所有できる英クラシック・スポーツ

MGの技術者だった、ドン・ヘイター氏による傑作の1台といえるMGBロードスター。これまでに作り出されたコンパクト・スポーツのなかで、最もプロポーションに優れたモデルとして数えることができる。

さらに運転しやすく信頼性も高い。現実的にわれわれが所有できる、ブリティッシュ・クラシックの1台といえる。筆者のひいき目も、多少はあるけれど。

MGBロードスター(1962〜1980年/英国仕様)
MGBロードスター(1962〜1980年/英国仕様)

MGBは細かな改良を受けながら、18年間も生産が続いた。アメリカで制定された安全基準に合致させるため、通称ラバーバンパーと呼ばれるポリウレタン製の黒いバンパーも追加された。それでも好調に売れ続けたという事実は、高い評価の表れだろう。

クラシック・スポーツカーの多くは、走行距離に関係なくタイミングベルト交換が予防的に必要だったりする。長く乗らないでいると不調に陥る、古いクルマ特有の複雑な電気系統が搭載されていることもある。しかし、MGBにはそんな心配は御無用。

週末ドライブを楽しむような乗り方なら、MGBは快く自宅まで走りきってくれるだろう。現代においても、楽しさはまったく薄れていない。もちろん、定期的なメンテナンスは必要ではあるが。

最大で唯一の弱点といえるのがボディのサビだが、英国ではすべてのボディパネルが今でも入手可能な状態にある。ボディシェル自体も購入できる。気力と資金さえあれば、対応は不可能ではない。

価格は上昇傾向 再生産部品の品質は向上

初期のMGBが履いていたタイヤは、旧式のクロスプライ。1速目にはシンクロメッシュが備わっていなかった。ヒーターや折りたたみ式ソフトトップ、バンパーのオーバーライダー、オイルクーラー、フロント側のアンチロールバーはオプションだった。

ワイヤー・ホイールもオプションだったが、レザーシートは標準。バッテリーは電圧6Vのものが2本、フロントシートの後ろ側に載っている。リアシート・クッションも、追加費用で設置できた。ワイパーはシングルスピードだ。

MGBロードスター(1962〜1980年/英国仕様)
MGBロードスター(1962〜1980年/英国仕様)

1963年からオーバードライブがオプションで選べるようになり、燃費を伸ばしつつ快適な高速移動を実現。同時期にオーバーライダーが標準になる一方で、シートはクロス張りに置き換えられた。

1967年には中期型のMkIIへアップデート。ワイヤーホイールとオーバードライブを除く、多くのオプションが標準装備になっている。また、トランスミッションはオールシンクロになった。

クロスプライ・タイヤは1972年まで継続採用。1974年からラバーバンパーになり、サンバイザーは1976年に追加されている。

近年はMGBも価格が上昇傾向にある。その人気へ釣られるように、レストアされた美しい個体は一層高く評価され始めている。再生産される部品の品質も向上している。

それらと反比例するように、スクラップ送りになるクルマは少なくなった。1962年の誕生から60年を迎えたMGBの未来は、明るく輝いているように思える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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