世界に誇るべき英国車 アストン マーティンDBS 日産キャシュカイ(デュアリス) e-パワー 英編集部選の5台 中編

公開 : 2022.11.26 09:46

変化の激しい時代でも、英国は魅力的なモデルを数多く生産しています。英編集部が選ぶそのトップ5をご紹介します。

アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ

今回のクルマを選ぶに当たり、何台もの候補が挙がった。それぞれにもっともな理由があった。しかし議論を深めていくと、そのラインナップには見逃せないほど大きなギャップが存在していることも見えてきた。

つまり、アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラに並ぶほど最高の英国車は、他に存在しないのだ。優雅でありながら適度にワルな、V型12気筒エンジンをフロントに搭載したグランドツアラーだ。

アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ(英国仕様)
アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ(英国仕様)

そのルーツを辿れば、1960年代のDB5へつながり、さらに遡れば1920年代の初の量産モデルへ結びつく。1世紀を通じて、自らのDNAを進化させてきたといえる。

あるいは、過去何度も実行され磨き込まれてきたレシピの、最新で最適な解釈によって生み出されている。これは、ジャガーベントレーモーガンロールス・ロイスといったブランドにも当てはまることではあるけれど。

バッテリーEV(BEV)へのシフトが進み、大排気量エンジンはもうすぐ終演を迎える。史上最高傑作といえるスーパー・グランドツアラーは、現役引退の節目が近づいている。

最新のDBSには、ドイツ由来のコンポーネントも少なくない。725psを発揮する5.2L V12ツインターボ・エンジンに、8速オートマティックのトランスミッション、多くの電子デバイスなどは、ドーバー海峡を超えて届けられている。

しかし、このDBSという威風堂々とした仕上がりは、英国のゲイドンでなければ達成が難しかったはず。まごうことなきアストン マーティンだ。

国としてのアイコン フェラーリの好敵手

AUTOCARでは2018年にDBSへ試乗し、満点の評価を与えている。正直なところ、筆者はその采配へ完全に賛同できるわけではない。

ボディの大きいアストン マーティンは若干扱いにくくもあり、英国の公道を運転していると気を使い疲れてしまう。グランドツアラーとしては、ベストな印象ではないだろう。

アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ(英国仕様)
アストン マーティンDBS スーパーレッジェーラ(英国仕様)

それでも、このクルマが大好きだということに変わりはない。むしろ4年後の今は、もっと惚れ込んでいる。

カーボンファイバー製のクラムシェル・ボンネットや、リアへ流れるグラマラスなラインは、これ以上良くしようがないと思えるほど美しい。DB3から着想を得たフロントマスクは歴代の定番といえるものだが、嫌いな人は少ないはずだ。

動的能力の仕上がりも素晴らしい。鮮明で好感触なステアリングは、技術者のマット・ベッカー氏が手掛けたもの。在任期間は短かったが、彼の技術力がしっかり落とし込まれている。

しなやかな乗り心地と、調整しろの広い操縦特性というバランスも、清々しいほどに優れている。フェラーリ812スーパーファストほどのシャープさは備わっていないが、不満を感じることはない。

国としてのアイコンでもあり、フェラーリの好敵手。これ以上の英国車を、筆者は思いつくことができない。 Richard Lane(リチャード・レーン)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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