5代目はなかったかも…… 変わる「ハイブリッド」取り巻く環境 新型トヨタ・プリウス誕生の背景
公開 : 2022.11.19 05:45 更新 : 2023.01.11 16:54
環境意識の高まりなどを背景に世界中で売れたプリウス。ハイブリッドの立ち位置が変わる中での船出となった5代目について解説します。
プリウスにしてプリウスにあらず
5代目「プリウス」が、プリウスとして大変貌を遂げた。
大変貌といっても、先に登場した「クラウン」と比べれば、プリウスの変化はユーザーにとって許容範囲なのかもしれない。
とはいえ、スポーティな4ドアクーペとして生まれ変わった5代目プリウスは、4代目プリウスとは明らかに違うクルマに思える。
記者会見では「コモディティ(利便性重視の乗り物)」か「ラブ(愛車)」という二極化した選択肢を設定するという、思い切った製品企画のプロセスを踏んできたことが明らかになった。
結果的に、5代目プリウス開発チームは「ラブ(愛車)」として、これまでのプリウスの常識を覆すようなデザインフォルムを追求することになったという。
会見後、筆者はデザイナーや各部門のエンジニアと意見交換したが、彼らは5代目プリウスに対して実に自然体に接している点がとても印象に残った。
彼らの言葉を要約すれば「プリウスとしてのこれまでの実績は尊重するも、今回はまったく新しいクルマを作り上げた」というイメージである。
こうした思いに至る経緯としては、やはり先代の4代目プリウスの存在が大きいと思う。
実は、4代目プリウスが登場した際、同車の開発関係者らと話した中で「次のプリウスがイメージできない」という言葉を筆者は聞いている……。
5代目はなかったかも……
4代目プリウスでは、当時トヨタが量産を本格化させたプラットフォームである、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用したことでプリウスの走りは大きく進化した。
パワートレインについても熟成が進み、またコネクティビティの領域でも新たなる取り組みが始まった。
当時は、ドイツのメルセデス・ベンツがCASE(コネクティビティ・自動運転・シェアリングなど新サービス領域・電動化)というマーケティング用語を使い始めたばかりだった。
その後、CASEは日本でも経済メディアやテレビを通じて一般名詞化し、日本ではCASEの影響によって「100年に1度の自動車産業大変革期」というフレーズが広まっていった。
4代目プリウスは、そうしたCASEの大波の中の船出となった訳だ。
そんな4代目プリウスの開発幹部と当時、じっくり話す機会があったが、その中で「こうした大きな時代変化の中、もしかすると、次のプリウスはBEV(電気自動車)になっているのかもしれない」と指摘した。
さらには「これまでのプリウスという製品性が通用しなくなっているのかもしれないし、プリウスという存在自体がどうなっているのか……。まったく想像できない」とまで言い、5代目プリウスの姿を連想することの難しさを表現していた。