アウディ 大気を「ろ過」する高効率なCO2回収システムとは 気候変動の解決策に
公開 : 2022.11.30 18:05
アウディは、オーストリアの環境技術企業Krajete社と共同で、大気中のCO2を回収するDACシステムを開発しています。気候変動に対する「切り札」となりうるDACについて紹介します。
大気中のCO2を回収・除去 DACの現状
わたし達が呼吸している物質が、地球にとって大きな脅威となるとは誰が想像しただろうか? CO2(二酸化炭素)がそうであることは定説となっているが、悔しいのは、マジックのように簡単に消し去ることができないということだ。あるいは、できるのだろうか?
大気中のCO2を回収するDAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)は、現在すでに実用化されている技術であり、このまま規模を拡大すれば、理論上は地球温暖化に変化をもたらす可能性がある。
アウディは、オーストリアの環境技術企業であるKrajete社と共同で、DACシステムの開発を進めている。オーストリアに最近設立されたプラントでは、CO2分子を高い割合で吸着できる無機フィルター素材を使用する。続いて、CO2は化学的に吸収され、CO2を含まないろ過された空気が大気中に放出される。この「吸着」と「吸収」は、まったく別のものだ。
吸着とは、分子や原子が表面に付着することであり、吸収とは、水がスポンジに吸い込まれるように、ある物質が他の物質に吸収されて一部となることを意味する。
アウディとKrajete社が開発したプロセスでは、回収(吸着)と除去(吸収)に必要な温度・圧力条件が非常に近い(通常は異なる)とされている。その結果、任意の時間枠でより多くのCO2を除去することができるという。
システムの稼働にはかなりのエネルギーを消費するが、同プラントでは敷地内の太陽光発電システムから電力を供給している。大気中の希薄なCO2を取り込むには、多くのエネルギーを必要とするのだ。
また、大気中のCO2回収作業は場所に依存しないため、太陽光発電に適した日当たりの良い地形や、水力・熱エネルギーを利用できる場所にプラントを設置することができる。
国際エネルギー機関(IEA)によると、現在、欧州、米国、カナダで18のDACプラントが稼動しており、年間約1万トンのCO2が回収されているという。米国では、年間1Mt(100万トン)を飲み込む巨大プラントが1基、「先行開発」段階にある。2050年までのネット・ゼロ・エミッションにはその60倍が必要だが、この数字は手の届くところにある、とIEAは言う。
現在回収されている少量のCO2は、しばしば炭酸飲料などに使われており、地層に貯留(隔離)しているのは、18のプラントのうち2つだけである。さらに11のプラントが建設中で、すべて完成すれば、2030年までにDACの回収総量は550万トンに達する見込み。
その1つが、年間50万〜100万トンのCO2を回収し、海底の深い地層に貯蔵する大規模プラント、Storegga社の「ドリームキャッチャー・プロジェクト(Dreamcatcher Project)」である。回収されたCO2は有用な原料とも考えられており、水素と組み合わせてカーボンニュートラルな合成燃料を作ることができるという。