世界18台限定の高級クーペ ベントレー・バトゥール 欧州で実車走行テスト始まる

公開 : 2022.12.05 18:05

ベントレーのコーチビルド部門マリナーが手掛けた新型バトゥール。2023年の生産開始に向けてテスト走行が始まっています。最高出力740psのW12エンジンを搭載し、デザインは新時代のEVを予感させるものです。

1つの時代の終わりを象徴する限定モデル

ベントレーは、少量生産の新型クーペ「バトゥール(Batur)」のテスト走行の様子を公開した。2023年半ばの納車に向けて、開発は大詰めを迎えている。

現在、欧州において58週間に及ぶテスト走行を行っており、プロトタイプの「0号車」がドイツからイタリア、フランス、スペインを経由する2500kmの長距離ドライブに挑戦しているという。

欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール
欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール    ベントレー

世界18台の限定モデルであるバトゥールを最後に、20年にわたりベントレーのモデルに搭載されてきた6.0L W12エンジンは、その歴史に幕を下ろす。

バトゥールは、ロングホイールベースのコンチネンタルGTをベースにした2ドア・クーペで、まだ開発段階だが、少なくとも最高出力740ps、最大トルク102kg-mとされるW12エンジンを搭載。これにより、ベントレーの公道モデルとしてはこれまでで最も強力なモデルとなる。

さらに、3チャンバー式エアサスペンション、48V電動アンチロールコントロール、電子リミテッドスリップデフ(トルクベクタリング機能付き)、後輪操舵(4WS)など、ベントレー最新のシステムを採用している。

テスト終了後、ベントレーのコーチビルド部門であるマリナーによって、英クルー工場で手作業で生産される予定。昨年12台のみの限定モデルとして登場したバカラル(Bacalar)の後継となる。

未来のEVを予感させるデザイン

ベントレーのエイドリアン・ホールマークCEOは、「わたし達は、捨てるためにコンセプトカーを作っているのではありません。お客様に購入していただくために作るのです」と述べている。

バトゥールという車名は、インドネシアのバリ島にある火山湖にちなんだもの。18台のみが生産される予定で、価格は税抜きで165万ポンド(約2億7000万円)となっているが、すでに完売したという。購入者の中には、バカラルを納車したばかり、あるいは現在も納車を待っている人もいるとのこと。

欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール
欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール    ベントレー

デザインを担当するのは、昨年初めにデザイン責任者に就任したアンドレアス・ミントが率いる新チーム。ミントは、バトゥールのデザインについて、2025年に登場予定のベントレー初のEVを予告するものだとしている。

彼はジュニアデザイナーとしてフォルクスワーゲン・グループに入社して間もない2003年、ベントレーのコンセプトカー「ユーノディエール」を担当した。バトゥールの開発にあたっては、ベントレーというブランドを改めて見直し、根本的な部分に立ち戻って存在価値を探ったという。

この地道なリサーチの結果、「力強さ」「インスピレーション」「調和」という3つのワードを特定。バトゥールのシンプルで飾り気のない、彫刻的なフォルムを作り出した。

彼はこう話している。

「装飾は必要ありません。わたし達は、高級車に対するお客様の優先順位が変化していると考えています。お客様はクルマに対し、派手さではなく、静かな感動を求めるのです。2次元のグラフィックから、光と影を多用したデザインへと移行しているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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