トヨタ CO2削減ならハイブリッド車が「効果的」 鍵は小型バッテリーの普及

公開 : 2022.12.06 20:05  更新 : 2022.12.06 20:08

トヨタのギル・プラット氏は、中期的にCO2排出量を減らす方法として、バッテリーEVよりもハイブリッド車を普及させる方が効果的と語ります。その理由は、バッテリー素材にありました。

貴重なバッテリー素材をEVに浪費してはいけない

トヨタは、バッテリーEVがCO2排出量削減の唯一の方法ではないという信念をさらに強めているようだ。ハイブリッドや水素など、さまざまなパワートレインの開発を進める方針「マルチテクノロジー」には多くのメリットがあるという。

トヨタが毎年開催している「Kenshiki(見識)フォーラム」で、同社のチーフサイエンティストであるギル・プラット氏は短中期的にCO2排出量を減らす手段として、限られたバッテリー素材をいかに効果的に展開できるかが重要と説明した。彼は最近、AUTOCARの取材に対し、「正しい解決策は単一の技術ではない」と語っている。

より多くの自動車にバッテリー素材を普及させれば、CO2排出量を削減できるとプラット氏は言う。
より多くの自動車にバッテリー素材を普及させれば、CO2排出量を削減できるとプラット氏は言う。

プラット氏によると、自動車全体のうち6%の純ICE(内燃機関)車をバッテリーEVに置き換えるよりも、90%の純ICE車を1.1kWhのバッテリーを搭載したストロングハイブリッド車に置き換える方が、排出量に大きな影響を与えるという。自動車100台の総排出量は、244g/kmから205g/kmと、大幅に削減されるためだ。

つまり、少ないバッテリー素材をより多くの自動車に使用することで、EVの販売台数は増やさないが、より効果的に排出量を減らすことができるというのがプラット氏の主張である。

トヨタはこの日のフォーラムで、新型EVのコンセプトモデル「bZコンパクトSUVコンセプト」と、2代目となる次期C-HRのコンセプトモデル「C-HRプロローグ」を発表。多種多様なパワートレインを同時に展開する姿勢を示した。

EU(欧州連合)と英国では、2035年以降のICE車販売禁止が差し迫っているため、ハイブリッド車(HEV)やPHEVの寿命は限られている。しかし、そのハイブリッド車とPHEVこそ、販売価格と利便性を維持しながら環境負荷を低減するのに重要な役割を担う可能性がある、というのがプラット氏の発言の趣旨と思われる。

「HEVは、バッテリーを有効活用することで、より安価に、より簡単にリサイクルすることができるのです」とプラット氏。また、充電設備が不要なため、EVのインフラが未整備な環境でも利用しやすい。

「限られたバッテリー素材を、できるだけ早く、できるだけCO2の排出を抑えられる場所に流通させたい」

「素材不足が続く今後10~15年に、長距離走行可能なEV、特に充電間隔が短いものだけに貴重なバッテリーセルを浪費してはいけないと考えています」

しかし、プラット氏は、トヨタはハイブリッド車やPHEVがいつまでもEVの代わりに使われるべきとは考えていないとして、「あと15年ほど」でEV大量生産を可能にするほど世界のリチウム採掘技術が発達し、バッテリーリサイクルも重要な資源となるだろうと述べた。

また、ノルウェーのように、再生可能エネルギーで発電した電気を利用できる地域では、すでにEVを運転することが理にかなっていると述べた。しかし、市場ごとに顧客の需要やEVに対する準備が異なることは明らかであるため、トヨタは「マルチテクノロジー」を継続するのだという。

「1つのパワートレインがどこでも最適な解決策になるとは思えません。わたし達の目標は、できるだけ早く、できるだけ多くの炭素排出量を削減することです。だからこそ、特定のパワートレインではなく、炭素が敵であると言っているのです」

また、水素パワートレイン(燃料電池と燃焼エンジンの両方)の利点について、特に「水素の低質量と高速給油が不可欠」な大型貨物車の分野では、バッテリーに代わる有力な選択肢であるとした。

平均的な電動大型貨物車は、充電時に従来の乗用車の約10倍の電力を消費し、満充電に1時間かかるのに対し、ディーゼル車は6分で済むとプラット氏。この時間ロスを抑えるためには、すべての貨物車用の給油スタンドを標準的なEV充電器の10倍の出力を持つ充電器10個に置き換える必要があると彼は推定する。「トラックステーションには、複数の給油スタンドがあることを忘れないでください」

そのレベルの電力を、特定の場所に常時供給する体制を整えるのに必要な時間と費用は「途方もない量」になるという。一方、「水素は同じ数のポンプで軽油と同じくらい速くトラックに補充できる」としている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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