ボルボの2023年 「着実進化」MY23モデル試乗 S90リチャージ&XC60リチャージ&V60

公開 : 2022.12.09 09:55  更新 : 2022.12.09 14:35

電動化を加速させるボルボを代表する3モデルに試乗。MY23モデルのキャラクターと進化をリポートします。

S90リチャージは上質な伏兵

S90はこれまで48VのMHEVモデルが導入されていたが、MY23からは最上級のリチャージ・アルティメットT8 AWDプラグインハイブリッドが導入されることになった。

試乗車はデニムブルーメタリックという濃いブルーで、ダークな仕上げのグリルなどと相まってフォーマルかつアグレッシブな印象を受けた。

ボルボS90リチャージ・アルティメットT8 AWDプラグインハイブリッド。EV走行レンジも長く、S90は81km(等価EVレンジ)となっている。
ボルボS90リチャージ・アルティメットT8 AWDプラグインハイブリッド。EV走行レンジも長く、S90は81km(等価EVレンジ)となっている。    宮澤佳久

SUVやエステートは度々試乗しているがS90は久しぶり。

その第一印象はオトシンに優れている! というものだった。

運転席に座っていてリアタイヤ周りからの音の侵入が少ないことが感じられたし、路面からの入力をスッと静かに往なしてしまう能力が高い。

例えばV90に乗っていても決してリアボディが緩いなどとは感じない。けれど音や振動といった細かいことも含めて評価すれば乗用車としての完成度はS90の方が上。

前後ドアのガラスがともに静音性の高い合わせガラスだった点にもS90の本気度が感じられた。

一方、MY23のボルボPHEVの定石どおりEV走行レンジも長く、S90は81km(等価EVレンジ)となっている。

今回の試乗でも少し強めにスロットルを踏んだ程度では2L 4気筒ターボ・エンジンが目覚めることはなく、ピュアEVに乗っている感覚でいられた。

S90(1089万円)のスペックはやはりPHEVのメルセデスのE350 eスポーツ(951万円)に近いのだが、両者には138万円もの価格差がある。

だがE350 eスポーツの駆動がFRで、EV走行レンジが49km(等価EVレンジ)であることを考えれば、AWDで81km走るS90の方が、将来性があるように思う。

熟成され、電動化へ XC60

今回試乗したXC60リチャージ・アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッドはシリーズの最上級モデルとなる。

以前はT8のXC60が頂点に君臨していたが、CISG(クランクインテグレーテッドスタータージェネレーター)の出力がアップしたことでスーパーチャージャーがいらなくなったのである。

ボルボXC60リチャージ・アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド
ボルボXC60リチャージ・アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド    宮澤佳久

インフォテインメントこそグーグル化されているが、室内の印象は依然とほとんど変わっていない。

メーターパネルのデザインが少し変わり、目盛りが振られたことなど、言われないと気づかないような変更ばかりなのだ。 

「ハイブリッド」モードで走りはじめると、先のS90と同じでエンジンが掛かる気配はない。

車体の前後にモーターを備えたピュアEVを運転している感覚なのである。

モーターのパワーは強すぎるわけでもなく、うまい具合にシャシーと調和している。

またスロットルオフでスーっとやさしく減速するワンペダルドライブの挙動も完成度が高く、ピュアEVらしさに拍車をかけている。

XC60のスタートプライスはやはり2022年から導入が開始されたプラスB4(FFモデル)の689万円。

ところが試乗車は約300万円アップの987万円なので、この価格帯になるとさまざまな選択肢が視野に入ってくる。

だがそこは最新のハイブリッド・ボルボの売りである長いEV走行距離(81km、等価EVレンジ)や、すっかり熟成なったドライバビリティ、ADASの完成度などがアドバンテージになるはずだ。

だからドイツ製のライバル数台と秤にかけてもなお、XC60リチャージを選ぶ理由は充分にあると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

PHEVもMHEVも着実進化 ボルボの3モデルに試乗

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