出色のRLMショートホイールベース 毎日味わいたいトヨタGR86 意見を二分したマクラーレン・アルトゥーラ BBDC 2022(4)
公開 : 2023.01.01 13:45
今年1番運転の楽しいクルマは? BBDC 2022(1) 公道とサーキットで11台を乗り比べ
出色のシャシーバランスや回頭性
RLMショートホイールベースの内側にあるシャシーやパワートレインは、完全にリビルドされているが、550マラネロのモノ。こちらも新車時にBBDC選手権へノミネートしているから、四半世紀を経て再評価されたといえる。
「このクルマが誕生したことで、世界が前より良い場所になりましたね」。とはジェームス・ディスデイル。「トップクラスの最新モデルで競い合う選手権で、実力を示すとは想像していませんでした」。とはマット・ソーンダース。
リチャード・レーンも、「コーナーへの侵入ポイントを探り、フロントをエイペックス目掛けて切り込み、穏やかなテールスライドへ持ち込む。ドリフトアングルの深さは関係なしに、最高の体験です。すべてに恋へ落ちた感じです」。と熱く話す。
筆者のメモを読み返すと、まとまった言葉は記されていない。つまり、自然吸気のV型12気筒エンジンとマニュアル・トランスミッション、フロントエンジン・リアドライブというパッケージングが素晴らしかったということだ。
ショートホイールベースは、11台で最高のドライバーズカーというわけではない。それでも、シャシーバランスやアクセルペダルでの姿勢制御、不安感のない鋭い回頭性など、出色の完成度にあった。
一方で、ノミネート車両で1番安価なトヨタには敵わなかった。良心や社会性といった視点で勝者を決めるなら、間違いなくGR86が選ばれるはず。企業としても、RLM社とは真反対のポジションにある。
自然吸気エンジンにMT、FRのスポーツカーへ可能性を見出している点では共通するが。
毎日味わいたいと思えるトヨタGR86
11台のノミネート車両で、1番お手頃なトヨタGR86は5位。公道で一層しなやかな足まわりの動きを実現できていれば、得点はさらに伸びただろう。
「初代の86より乗り心地は明らかに硬い。グリップが高まり、よりシリアスな設定になったのが少し残念ですね。限界領域も高くなり、公道で自在に振り回すことが若干難しくなったようです」。とマット・ソーンダースが表現したが、筆者も同感だ。
翻ってサーキットでは2代目の実力に納得。落ち着いた身のこなしと、ステアリングの感触に疑問はない。「冷えたサーキットとタイヤ、ESCオフの設定が最高。毎日味わいたいと思えますし、永遠に乗っていられそうです」。マット・プライヤーが称える。
こんなスポーツカーが、英国では完売状態。GR86の供給量が需要を遥かに下回っていることが、残念でならない。
4位は、マクラーレン・アルトゥーラ。われわれを存分に満たし、トップ3入りするのではという期待も高かった。しかし惜しくも、それに届かなかった。2022年のBBDC選手権の熾烈さを物語っている。
同時に、審査員5名の意見を二分したことも事実ではある。実際、2人は1位の得点をつけている。追ってご紹介する今年の優勝モデルも、1位とした審査員は2名だった。ところが、GR86より低い点数を付けた審査員もいたのだ。
アルトゥーラの仕上がり自体に不備はない。「従来のモデルとのつながりを感じる、マクラーレンらしいクルマですね。でも、どこか冷淡なんですよ」。ジェームス・ディスデイルが悩ましそうに口にする。