ポルシェはヘッドライトも凄かった 対向車も眩しくないハイビーム、3万2768個のLED使用
公開 : 2022.12.12 18:45
ポルシェは、2023年より導入予定の最新ヘッドライト技術を公開しました。3万個以上のLEDピクセルを使用し、幅広く照射しながら歩行者や対向車が眩しくないハイビーム機能を備えています。
不快な眩しさのないヘッドライト
ポルシェは、2023年に導入予定の新しいHDマトリックスLEDヘッドライト技術を公開した。「グレアフリーハイビーム(照射範囲を調整可能なハイビーム)」の新基準を打ち立てるとしている。
この新技術は、2023年モデルのポルシェ・カイエンとカイエン・クーペにオプションとして設定される予定。現行モデルで採用されているものとは大きく異なり、特にハイビーム機能は2つの光源を使用している。
ポルシェの照明モジュール責任者であるベンジャミン・フンメルは、近年の特徴的なデザイン要素となっている4点式をさらに強調したいという思いから、このような技術が生まれたと述べている。
そのため、新しいヘッドライトでは、既存のLEDマトリックスヘッドライトの中央にある単一のハイビームユニットを廃止した。これに代わり、各ヘッドライトの下側に2つ、合計4つのユニットを配置している。
ボッシュ、インフィニオン、Nichia(日亜)と共同開発したHD LED技術を採用し、各ユニットには8192個のLEDが埋め込まれる。合計3万2768ピクセル、最大300lxの照度を誇る。これに対し、ポルシェの既存のLEDマトリックスは、1ユニットあたり84ピクセル、合計168ピクセルにとどまる。
左右のハイビームをツインユニットとし、ピクセル数を大幅に増やすことによって、現在のシングルユニットに比べてさらなる均質性と性能を実現するとのこと。フンメルは次のように述べている。
「ハイビームでは300lx、600mまで照射することが可能です。しかし、重要なのは距離だけではありません。フィールド全体への配光も必要です。それを4つの光源で実現しました。中央部とサイド部の明るさを連続的に調整することで、道端の照度を高めることができます。照度が高ければ高いほど、照明性能の向上につながります」
LEDは髪の毛ほどの太さ
このようなヘッドライトを可能にしたのは、新しいマイクロLED技術である。髪の毛ほどの太さのLEDで、8192個を1つにパッケージすることができるという。また、新開発のHD ECUは、各LEDの照明効果を3Dグラフィックで自動計算するとされている。
さらに、フロントガラスに取り付けられたステレオカメラと赤外線センサーとの組み合わせにより、歩行者や対向車などを避けて照射できる。
「ナビゲーション、トラフィック、シャシー、ステアリングのパラメーターも計算の一部です」とフンメルは述べている。
ハイビームの光量は124段階で調整でき、16ミリ秒ごとに照射が更新される。これにより、道路標識などの強い反射や眩しさを低減できるという。
通常のハイビームやグレアフリーハイビーム、アダプティブ・ハイウェイハイビーム、ダイナミックセーフティゾーンなどの機能も実装されている。ポルシェは今後、「ウェルカム」と「出発」のアニメーション機能も導入する予定だ。
なお、ヘッドライトの重さは従来品と変わらないとのこと。
ロービームを担うLEDは、各ヘッドライトユニットの上部に収められており、それぞれ3ピクセル、合計12ピクセルで動作する。
ポルシェは、ヘッドライト技術の開発のため、ドイツ・シュトゥットガルト郊外にあるヴァイザッハの研究開発センターに新しい「光トンネル」を設置した。窓のない2階建ての施設に、全長100m、幅15mのアスファルトのコースが敷かれ、光の角度を正確に測定するゴニオメーターなど、さまざまな装置が置かれている。