米海兵隊員、盗難後に事故! ホンダ・シビック・タイプR新型 日米地位協定で泣き寝入り、本当か? 処罰は  修理代は誰が負担するか

公開 : 2022.12.15 13:05  更新 : 2023.03.31 09:34

自動車販売店敷地内でシビック・タイプRが盗難被害に。犯人の海兵隊員はどのような罰を受けるのか、修理代は誰が払うのか解説します。

新型シビック・タイプRが盗まれた……

12月3日、山口県岩国市にある自動車販売店の駐車場にて納車されたばかりの新型シビックタイプRが盗難の被害にあった。

13日にテレビのニュース番組がこの件を報道しており、駐車場に設置された防犯カメラがその一部始終を捉えていた。

盗難の被害にあったホンダ・シビック・タイプRは、自動車販売店の従業員が購入したばかりのクルマ。同販売店に設置された防犯カメラが盗難被害発生時の様子を捉えていた。盗難後、左フロントが破損した状態で乗り捨てられていたという。
盗難の被害にあったホンダ・シビック・タイプRは、自動車販売店の従業員が購入したばかりのクルマ。同販売店に設置された防犯カメラが盗難被害発生時の様子を捉えていた。盗難後、左フロントが破損した状態で乗り捨てられていたという。    ホンダ

報道によると、犯人の男は米軍海兵隊岩国基地に属する海兵隊員でクルマを盗んだあと事故を起こしそのまま放置し岩国基地に戻っていたという。

現場に設置された防犯カメラの映像を見ると、

・朝6時20分頃、1人でこの自動車販売店の敷地内に侵入

・敷地内に停めてあった販売店従業員所有のシビックタイプRの周囲をうろうろ。座って眺めたり、窓から車内をのぞき込んだり……

・販売店の事務所内にドアのガラスを足で蹴り割って侵入

・タイプRの鍵を探しだし、鍵を使ってタイプRのドアをあけエンジンをかける

・その後、単独事故を起こし、クルマを放置したままその場を離れる

・警察から所有者の男性に連絡があり、男性は納車されたばかりのタイプRが盗まれて事故を起こされたことがわかる

・警察からは「日米地位協定があるので、時間がかかるかもしれない」と告げられる

事件が発覚したのは、海兵隊員が基地に戻った後であるため、日本の警察は身柄を拘束することができなかった。

しかし犯罪を犯したこの隊員は岩国基地内で身柄を拘束されていると思われる。

クルマを盗んで事故を起こしたことが明らかになっているこの事件。今後、この海兵隊員にはどのような処罰が与えられるのだろうか?

また、米軍人が事件を起こしたときなどに必ず出てくる「日米地位協定」という言葉。これはどのような協定で、なぜ、事件解決に向けて「障壁」だといわれるのだろうか?

そもそも本当に「障壁」なのか? 壊されたシビックタイプRの損害は誰がどのような形で支払うのか?

事件解決の「障壁」? 日米地位協定とは

日本には計131か所の米軍基地が存在しており、在住している米軍関係者の数は約10万人とされている。

米軍関係者の法的地位等は日米間で結ばれた「日米地位協定」によって定められている。

MARINE EXPEDI TIONARY FORCE MARINE CORPS INS T ALLATIONS/PACIFIC(海兵隊遠征軍/太平洋)が作成している、【HOW SOFA WORKS (Off-Duty Incidents)】(公務以外で起こった事件に対して日米地位協定はどのように作用するのか)という内容の資料に日米地位協定について詳しく書かれている。
MARINE EXPEDI TIONARY FORCE MARINE CORPS INS T ALLATIONS/PACIFIC(海兵隊遠征軍/太平洋)が作成している、【HOW SOFA WORKS (Off-Duty Incidents)】(公務以外で起こった事件に対して日米地位協定はどのように作用するのか)という内容の資料に日米地位協定について詳しく書かれている。

外務省の公式サイトでは以下のように定義されている。

日米地位協定

日米地位協定は、日米安全保障条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍との円滑な行動を確保するため、米軍によるわが国における施設/区域の使用とわが国における米軍の地位について規定したものであり、日米安全保障体制にとって極めて重要なものです。

協定はどのように作用?

米軍関係者が日本国内で日本人に対して被害を与えるなどの犯罪をおかした際、この協定はどのように作用するのか?

日本では残念なことに、一部の報道によって「米軍人が罪を犯しても日米地位協定によって守られるので、刑罰も受けず、また損害賠償もされない。そのうちアメリカに逃亡して被害者泣き寝入り……」などの誤った認識が広まっているがそれは絶対にありえない。

MARINE EXPEDI TIONARY FORCE MARINE CORPS INS T ALLATIONS / PACIFIC(海兵隊遠征軍/太平洋)が作成した【HOW SOFA WORKS(Off-Duty Incidents)】という資料によると、

「問題が生じた場合には日米両国の法制度によって処分」

「場所や犯罪の内容にかかわらず正義は守られる」

「米国の刑罰は一般的に日本の刑罰より厳しく米国軍事法はさらに厳しい」

と書かれている。

具体的な最高刑の違い

具体的に最高刑の違いも紹介されており、今回の事件に当てはめてみると……。

家宅侵入・不法侵入

1年(日本)、5年(米国法・米国軍事法)

器物損壊

3年(日本)、10年(同)

なお、肝心な「窃盗」についてはいずれも10年だが、日本では被害総額20億円の自動車盗でもせいぜい6〜7年であるのに対して、米国では2万ドル以上の被害で10年となっている。

新車のシビックタイプRは当然2万ドル(280万円)以上の被害となるため窃盗に関しては最高刑の10年が適用されるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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