PHEV化で得たものとは メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンスへ試乗 総合680ps 前編

公開 : 2022.12.26 08:25

4気筒ターボでハイブリッドになったAMGの C63。速さはV8に並ぶものの、興奮を呼ぶ獰猛さは潜めたと、英国編集部は評価します。

4気筒エンジンのプラグイン・ハイブリッド

25年前、現在のメルセデスAMGCクラスにV8エンジンを押し込み、唯一無二の中型スーパーサルーンを創出した。W202型のC 43 AMGが姿を表したのは1997年。メルセデス・ベンツの傘下に入り、自社工場で生産された初めてのAMGだった。

V8エンジンを積んだCクラスが生み出されなければ、現在のような成功をAMGが掴むことはなかったのではないかと筆者は思う。それから四半世紀が過ぎ、新たな1ページが始まった。もはや、この類まれな組み合わせは帰ってこない。

メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス(欧州仕様)
メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス(欧州仕様)

メルセデス・ベンツの上層部は、大排気量のCクラスが時代遅れになると危惧したのかもしれない。メーカー平均でのCO2排出量を改善することも、念頭にはあったはず。

AMGが新型C 63 S Eパフォーマンスへ採用したのは、2.0Lの4気筒エンジンとプラグイン・ハイブリッド(PHEV)。比較的小さなボディに大きなV8エンジンというパッケージングこそ、特別感を醸し出していた核心だったのだが。

販売台数の少ない大型モデルなら、今後もしばらくV8エンジンを登用する余地がある。ハイブリッド化することで効率を改善しつつ、付加価値を高めて価格を上昇させ、利益率も保てるだろう。しかしCクラスは台数が多すぎ、継続は難しかったようだ。

近年の欧州市場では定番化しつつある、喜ばしくないスパイラルだ。その結果を体験すれば、ドライバーズカーとして影響の大きさを実感せずにはいられない。いささかネタバレではあるが、何かが欠けているように物足りなさが漂っていた。

四輪駆動と四輪操舵システムも搭載

新しいC 63 S Eパフォーマンスには、失ったV8エンジンの穴を埋めるべく、AMGが準備できるあらゆる技術が盛り込まれている。パワートレインにも、シャシーにも。しかし完璧にはカバーできていない。

印象はどこか蛋白で無愛想。AMGらしい、情熱のようなものが薄いのだ。

メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス(欧州仕様)
メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス(欧州仕様)

現実世界では、スポーツサルーン存続のための選択肢が限られていることは間違いない。リスクを負いながら、モデル自体の消滅を防いだことは称賛すべきだと考える。だとしても、導かれた答えは正解だったのだろうか。

さて、C 63 S Eパフォーマンスに搭載されるエンジンは、M139型と呼ばれる2.0L直列4気筒ターボガソリンの最新版。AMGのモデルでは、Aクラスに横置きされているユニットと基本的には共通する。

AMGとして必要なパワーを得るため、ターボチャージャーは大型化された。さらにターボラグを最小に留めるため、電圧400Vで稼働するモーターによってタービンの回転が維持されるという。

その結果、最高出力は475ps、最大トルクは55.4kg-mを達成している。牛乳パック2本ぶんの排気量で。これを受け止めるのは、スピードシフトMCTと呼ばれる9速AT。トルクベクタリング機能付きの四輪駆動で、リアにはリミテッドスリップ・デフも付く。

C 63 S Eパフォーマンスは、初めて四輪駆動システムを搭載したAMGのCクラスになった。4気筒エンジンを積むのも初めてではある。四輪操舵システムも搭載する。これ以上、必要な技術は思い浮かばない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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