航続距離を474kmへ伸長 アウディSQ8 eトロン・スポーツバックへ試乗 最高出力503ps
公開 : 2023.01.01 08:25 更新 : 2024.06.12 10:34
トリプルモーターの高性能EV SUVがマイナーチェンジで改名。競合モデルの方が総合力では優勢だと、英国編集部は評価します。
もくじ
ーeトロン S改めSQ8 eトロンに
ー凍結路で発揮されるトルクベクタリング
ーSQ8 eトロンの形勢は少々芳しくない
ーアウディSQ8 eトロン・スポーツバック・ブラックエディション(欧州仕様)のスペック
eトロン S改めSQ8 eトロンに
バッテリーEV(BEV)の拡大を進めるアウディは、フェイスリフトに合わせて一部のモデル名を見直した。これまでeトロンを名乗っていた大型SUVはQ8 eトロンになり、eトロン SはSQ8 eトロンに改められている。
SQ8 eトロンの特徴といえるのが、フロントに1基、リアに2基、合計3基の駆動用モーターを搭載すること。それにより秀でた動力性能と、高精度なトルクベクタリング機能を実現させている。
リアの駆動用モーターを左右個別に制御することで、片側のタイヤに最大で22.3kg-m大きいトルクを掛け、鋭いコーナリングを可能としている。トリプルモーター合計での最高出力は503ps、最大トルクは99.0kg-mがうたわれる。
フェイスリフトで得たアップデート内容は、基本的には穏やかなQ8 eトロンと同等。駆動用バッテリーはエネルギー密度を高め、容量は89kWhから106kWhへ増えた。ワゴンボディの通常のSQ8 eトロンでは、航続距離が355kmから457kmへ伸びている。
今回試乗したクーペボディのSQ8 eトロン・スポーツバックでは、ドライブトレインは同じながら空力特性が貢献し、474kmと僅かに長い。一方でツインモーターのQ8 55 eトロンでは、531kmが主張されている。
凍結路で発揮されるトルクベクタリング
エネルギー効率は、ワゴンボディのSQ8 eトロンで3.5km/kWh。スポーツバックで3.7km/kWhと、ライバルモデルと比較すると少々劣る。
BMW iX xドライブ50の場合、駆動用バッテリーの容量は同等で航続距離は548kmある。動力性能では少し劣るが、ジェネシス・エレクトリファイドGV70はさらに効率が良く、77.4kWhの容量ながら455kmがうたわれている。
いわずもがな、同じ距離を走るとすれば、SQ8 eトロンの方がより充電時間が長く電気料金も掛かる。内燃エンジンでの燃費の差と同じだ。
それでいて、動的能力はアウディのSモデルとして期待するほど、並外れた水準にまでは届いていない。0-100km/h加速は4.5秒でこなし、気持ちが悪くなるほど鋭いダッシュ力を披露する高性能BEVの仲間入りは果たしていても、その楽しさは長くは続かない。
トリプルモーターを活かした、トルクベクタリング機能は素晴らしい。半年ほど前に開かれたメディア向けの試乗会では、凍結した湖上で能力を体験させてもらったが、深く感心させられた。ただし、一般的な路面条件ではQ8 eトロンとの違いは小さい。
確かに、SQ8 eトロンの走りは鋭く機敏ではある。かといって、車重が2650kgある大型SUVを、存分に振り回したいと考えるドライバーの数は多くないだろう。