アイドリングストップって何? メリットとデメリット エンジン寿命に影響はあるのか
公開 : 2022.12.27 18:05
今や多くのクルマに搭載されている「アイドリングストップ」機能。燃費改善や排出ガス・騒音の低減を目的とした機能ですが、エンジン寿命や耐久性に影響を与えることも……。
アイドリングストップの仕組み
近年の新車ではほぼ当たり前の機能となった「アイドリングストップ」。燃費の改善と排出ガスの低減を目的としたもので、国産車、輸入車問わず多くのエンジン車で採用されている。しかし、長期的にはエンジンの耐久性に影響はないのだろうか?
今回はアイドリングストップ機能について振り返りながら、そのメリットとデメリットを紹介したい。
アイドリングストップとは?
アイドリングストップとは、エンジンのアイドリング(空回り)を不要な際に自動で停止させる機能のこと。停車時にエンジンを止め、ブレーキを離したりギアを入れたりして発進・加速するときに再始動させる。
ハイブリッド車では、低速で巡航しているときや坂道を下っているとき、また減速中にもエンジンを停止させることがある。
停止・始動の仕組みは?
仕組みとしては、停車時やギアをニュートラル(N)に入れたとき、またはエネルギーをほとんど必要としないときに、車載コンピューターが判断してエンジンへの燃料供給と点火を停止する。ハイブリッド車の場合は、エンジン停止中も電気モーターにより一定の距離と速度で走行可能だ。
車両が動き出したり、ギアをドライブ(D)に入れたりするとイグニッションがかかる。基本的にはすべて自動で行われるが、ドライバーの任意でオン・オフを切り替えることもできる。
従来のスターターモーターは、エンジンのフライホイールの外側に取り付けられた大きな「リング」ギアと小さなピニオンギアを噛み合わせることで機能している。最新のアイドリングストップ技術は、見た目こそほとんど変わらないものの、モーターはより強力になり、反応速度も向上している。大型バッテリーと高電圧システムを使用するのが一般的だ。
アイドリングストップのデメリット
エンジンを摩耗させる?
耐久性と寿命の観点では、アイドリングストップ機能の作動回数が多いほどエンジンの消耗が激しくなる。あらかじめ対策はなされているはずだが、それでもエンジンの停止・始動の繰り返しによる影響はゼロにはならないだろう。
自動車部品メーカーのフェデラル・モーグル社でベアリング設計を担当するゲルハルト・アーノルド氏は、次のように語っている。
「アイドリングストップ機能のない従来のクルマは、最大5万回のエンジン停止・始動を繰り返すと予想されています。しかし、アイドリングストップ搭載車の場合は飛躍的に増加し、50万回もの停止・始動を繰り返すことになります」
この差は大きく、エンジンのベアリングの耐久性に大きな課題をもたらしている。
エンジンの基本部品であり、最も重い部品の1つがクランクシャフトだ。クランクシャフトは、ジャーナルと呼ばれる複数の部品とメインベアリングにより支えられている。
エンジンが回転しているとき、クランクシャフトとメインベアリングの表面は薄いオイルの膜によって分離され、接触していない。オイルは回転するクランクシャフトの作用によってベアリング表面に送り込まれ、潤滑剤となる。これは「流体潤滑」と呼ばれるプロセルだが、エンジンが停止すると、クランクはベアリングの上に沈み込み、金属表面が接触する。
エンジンが始動し、2つの部品の表面がオイルによって分離する前に、「境界潤滑状態」と呼ばれるポイントがある。回転するクランクシャフトとベアリング表面の間に金属同士の接触がある状態だ。
これが摩耗の原因となる。つまり、アイドリングストップ搭載車では、廃車までに累計50万回の境界潤滑条件(金属同士の接触)が存在する可能性があるのだ。通常のベアリングでは、すぐに摩耗してしまう。
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