アウディが後輪駆動? EV「Q4 eトロン」の走りをチェック グループのメリット活かす戦略車

公開 : 2023.01.03 11:25

アウディの中核EVと期待される「Q4 eトロン」をテスト。600万円台から選べる戦略価格で、主要メーカーがしのぎを削るEV戦線を勝ち抜こうという構えです。その実力は?

アウディ内燃車も、あと10年

電気自動車(BEV)のボリュームゾーンと言える、CセグメントのSUV。日本でもすでに日産アリアトヨタbZ4X/スバルソルテラテスラモデルYフォルクスワーゲン(VW)ID.4などが販売されているカテゴリーに、アウディもQ4 e-tronで参入した。

アウディは2050年までに、生産から廃棄に至るまでのライフスタイル・アセスメントでのカーボンニュートラルを目指しており、2026年以降の新型車はすべて電気自動車とし、2033年には中国以外で内燃機関を生産停止すると発表している。

アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)
アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)    アウディジャパン

もっとも安いモデルでさえ日本では1000万円以上という従来のBEVラインナップでは、目標達成は困難だろう。

エンジン車のA3やA4から乗り換えできる車種がないのだから。Q4 e-tronの投入は、彼らのカーボンニュートラル戦略のうえでは必然と言える。

とはいえQ4 e-tron、100%アウディの独自開発ではない。

フラッグシップのe-tron GTが、同じVWグループ内のポルシェタイカンと基本設計を共有した手法を、今度はID.3/ID.4とのペアで実現した。

フロアに薄くバッテリーを敷き詰め、リアにモーターを置くというテスラ式プラットフォームは共通で、2765mmのホイールベースは5mm短いだけ。

4590×1865×1630mmというスリーサイズは、ID.4比で5mm長く、15mm幅広く、10mm低い。

スペック/デザインについて

モーターの最高出力は、ID.4では2種類あるが、Q4 e-tronは高出力の150kW版のみとなる。最大トルクは310Nm(31.6kg-m)だ。

満充電での後続距離は594kmとなっている。このあたりの数字はアリアB6と同等だ。

アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)
アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)    アウディジャパン

特筆すべきはこのモーターがリアのみに置かれること。

VWはビートルなどがリアエンジンだったので先祖返りと言えるが、アウディは他のBEVはすべて4WDのクワトロであり、ミドシップスポーツR8のRWDモデル(日本未導入)を除けば、このブランドではアウトウニオンPヴァーゲン以来の後輪駆動ではないかと思われる。

ボディはハッチバックと写真のスポーツバックの2タイプで、後者は外寸では全高が15mm低くなるだけ。デザインもグラスエリアから下は共通だ。

パッと見て多くの人がアウディだとわかる姿であるが、プロポーションはノーズが短くキャビンが長いBEVルックになっている。

近年のアウディは、かつて和田智さんが在籍していた頃に比べると、デザインはやや煩雑に感じる。Q4 e-tronも例外ではなく、VWとの差別化を図るためかもしれないが、もう少しすっきりしてほしいと感じた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事