1954年のクラス優勝マシンを再現 ブリストル450ル・マン 異彩のツインフィン 前編
公開 : 2023.01.21 07:05
異彩を放つスタイリングのレーシングマシン、450ル・マン。可能な限り充実に再現された1台を、英国編集部がご紹介します。
予想を裏切るツイン・テールフィンの後ろ姿
年代物のクラシックカーでも、斜め前方から撮影した写真を見れば、後ろ姿は想像できる場合が多い。しかし、すべてがそうとは限らない。小柄なブリストル450ル・マンは、予想を裏切るスタイリングをまとう。
不自然に長く見えるプロポーションは、デザイナーの空気力学に対する考えによるもの。横へ回ると、戦闘機のように細長いだけではないことがわかる。垂直尾翼のようなテールフィンが、弧を描くリアエンドに突き出ている。2枚。
機能美とも表現できなくないボディは、フランス人アーティストのオリヴィエ・ボレ氏に強い動機付けを与えた。失われたクーペボディを蘇らせたいという衝動に。
「空力特性に長けたモデルを探していました。特徴的で珍しいデザインが好きなんです。ブガッティ・アトランティーク(タイプ57)のような、流線型へ魅了されてきました」。かなりのクラシックカー・マニア、ボレが経緯を説明する。
「でも、魅力的なクルマの多くは入手が難しい。価格も高すぎます」。と話す彼は、ブリストル404のオーナーだった過去がある。テールに小さなフィンが生えた、滑らかなボディのクーペだ。450ル・マンへとボレを導いたきっかけになった。
このブリストルは、1950年代初頭のル・マン24時間レースへ向けて4台製造されているが、現存するのはシャシー番号11の1台のみ。しかしロードスターにコンバージョンされ、余生を過ごしている。
クーペボディ復活への糸口になった対面
グレートブリテン島南部、ウィルトシャーを拠点にブリストル・カーズの再生を図るコーチビルダー、ミッチェル・モーターズ社のアンドリュー・ミッチェル氏とボレとの対面が、クーペボディ復活への糸口になった。アイデアはプロジェクトへ進展した。
「ミッチェルは惹き込まれるように関心を示しました。オリジナルが消滅しているので、考えは正当化されました。他に存在するクルマのレプリカではないという点で」
2人は可能な限りブリストルの部品を用いることに決め、シャシー探しからスタート。スペースフレームのオリジナルは、遥か以前にカタチを失っていた。
「ミッチェルが、1953年に作られた406の開発用シャシーを発見しました。もちろん、ベースとして即決で買いました」。ボレが笑みを浮かべる。
次は、標準のソレックス・キャブレターを1基ではなく、ツインチョークでキャブレターを3基搭載した「12パイプ」と呼ばれるエンジン。インテークダクトとエグゾーストパイプを合計して、12本のパイプが備わることからこの名が付いた。
生産数が限られたユニットだったものの、ボレが発見。できる限り当時の状態へ近づけ、リビルドを完了させた。
トランスミッションはル・マン仕様ではトランスアクスルだったが、これは断念。オーバードライブが備わるブリストル社製の4速マニュアルが、直列6気筒エンジンの後方に組まれている。
「このレイアウトで、エグゾーストの取り回しに影響が出ています。でも、複雑なマニフォールドのカタチは当時と同じです」