マツダ「ロータリーエンジン」復活、なぜ今? 規制や経営合理化に翻弄 マツダが守ったロータリーの火
公開 : 2023.01.11 20:30
マツダはMX-30レンジエクステンダーで「ロータリーエンジン」を復活させます。なぜ今なのか、歴史とともに考察します。
ロータリーエンジン復活
マツダの欧州法人であるマツダ・ヨーロッパが、ベルギーのブリュッセルモーターショー(2023年1月14~22日)で「MX-30」レンジエクステンダーを世界初公開することを明らかにした。
レンジエクステンダーとは、航続距離を延ばすためにエンジンなどの原動機を発電機専用で搭載するタイプのEV(電気自動車)を指す。
マツダの場合、搭載するエンジンはロータリーエンジンだ。
マツダのロータリーエンジン搭載車は、2003年から2012年まで合計約19万台が販売された「RX-8」を最後に、これまで約11年間のブランクがある。
なぜ、マツダはこのタイミングでロータリーエンジンを復活させたのだろうか?
いま思えば、マツダのロータリーエンジンの歴史には紆余曲折があった……。
マツダのロータリーエンジンは、60年代にドイツのNSU社およびバンケル社との間で技術提携を結ぶことから始まるが、量産化に向けた技術的な課題を開発するハードルは高く、10A型エンジン搭載の「コスモスポーツ」が登場したのは、技術提携から6年後の1967年だった。
その後、70年代から90年代にかけてマツダはロータリーエンジンの独自開発を進めていく。
だが、自動車産業界全体が排気ガス規制の荒波にもまれる中、グローバルでロータリーエンジンを量産車向けに大量生産する企業はマツダのみとなる。
次期「RX-7」は叶わぬも……
そうした中、マツダがロータリー存続の危機に直面したのが90年代半ば過ぎであった。
「RX-7」の生産終了に伴い、次期RX-7をイメージして1995年の東京モーターショーに出展したコンセプトモデルが「RX-01」だった。
しかし、当時のマツダはフォード傘下にあり、経営の合理化によりプロジェクトは大幅な縮小を余儀なくされた。
それでもロータリーの火を消してはならないとするマツダ関係者は、マツダ上層部と粘り強く交渉。結果的に、量産車は「RX-7」のような2ドアスポーツカーではなく4ドア・4シーターに変更され開発のGOがかかる。
コンセプトモデルとして登場したのが、1999年の東京モーターショーに出展した「RX-EVOLV」だ。これが2001年の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)出展の「RX-8」につながる。
筆者(桃田健史)は、アメリカ国内でおこなわれた「RX-8」の一般サーキットを使った開発現場に、たまたま別件があり居合わせた。
その際、マツダが北米市場を意識して使っていた比較車はBMW 3シリーズだった。
結局、「RX-8」量産車登場は、「RX-EVOLV」登場の4年後となる2003年のデトロイトショーまで待たなければならなかった。
その後、カリフォルニア州ラグナカで開催された「RX-8」国際試乗会に参加したが、その際にも「RX-8」量産に向けた苦労話をマツダ関係者から数多く聞いた。