名を伏せていても本物 LMC MKII FIAへ試乗 415psの5.7L V8でコブラを再現

公開 : 2023.01.18 08:25

1960年代のル・マン・レーサーが現代で復刻。他に例を見ないほど豪快で魅力的な走りを、英国編集部は高く評価します。

オリジナルにかなり近いドライビング体験

今回筆者が試乗したロードスターは、LMC MKII FIAという。かのACコブラではないし、シェルビー・コブラでもない。見た目は、限りなく近かったとしても。

英国のACカーズが仕上げた軽量なシャシーとボディに、アメリカのパワフルなV8エンジンを組み合わせたオリジナルのコブラは、恐らく史上最も多くのレプリカが作られたスポーツカーだろう。権利を有する会社が、不法なコピーに対して提訴したこともある。

LMC MKII FIA(英国仕様)
LMC MKII FIA(英国仕様)

この真っ赤なロードスターは、グレートブリテン島南部、ウエスト・サセックス州に拠点を構えるル・マン・クーペス(LMC)社が製作した。先日試乗したシェルビー・デイトナ・コブラのように、正式に認可を得たコンティニュエーション・モデルとは異なる。

しかし、ドライビング体験はかなり近い。コブラはサーキットでの競争力を維持するため、1962年から多様な仕様が作られてきた。同様にLMCも、様々な時代からインスパイアされたロードスターを提供している。

通称スラブサイドという、初期のコブラに近い見た目と内容のモデルも選べるし、427cu.inのV8ユニットを搭載した後期型に近いMKIIIも提供している。今回のMKII FIAは、その間に位置するモデルだ。

エンジンは、標準では289cu.inのV8が積まれる。国際自動車連盟の略、FIAの文字が続く通り、レース用チューニングが施されてもいる。ただし、スタイリングは本来よりかなりマッチョ。ボンネットには、巨大なエアスクープが載っている。

最速の1台だったモデルの正確なレプリカ

MKII FIAのシャシーは、初期型と同じ直径3インチ(約76mm)のチューブラーフレーム。サスペンションはリアが横置きのリーフスプリングで、両サイドのホイールハブを支えている。

ペダルやステアリングホイールなどの操縦系はかなり重く、シャシーの挙動はシャープ。アマチュアドライバーのミスを許容してくれる懐は浅い。

LMC MKII FIA(英国仕様)
LMC MKII FIA(英国仕様)

1960年代のドライビング体験が、高度に再現されている。当時は世界最速の1台だったスポーツカーの、正確なレプリカだと考えても間違いではないだろう。

ただし試乗車には、標準とは異なる350cu.in相当の5.7L V8エンジンが搭載されていた。放たれる415psとリアタイヤをどう扱うかは、すべてドライバーに掛かっている。

現代の高性能なタイヤを履きグリップ力は向上しているが、電子的なセーフティネットは一切備わらない。パワーアシストの付かないステアリングのレシオは低い。リアアクスルは、アクセルペダルを雑に扱うと簡単に路面を掴むのをやめる。

ヒヤッとするほど暴れることなく、鋭い加速は可能ではある。それでも、路面が平滑ではない郊外の一般道で、操縦性の限界を探るのは控えた方が良さそうだ。

少なくとも動力性能は高い。ワイドでオープンなサーキットなら、大暴れできそうな気はする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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