燃料電池は「オワコン」ではない 水面下で進むFCEV復活 BMW、トヨタも参戦
公開 : 2023.01.17 06:05
クルマの電動化が進む中、水素やメタノールを使うFCEV(燃料電池電気自動車)はあまり話題に上がりません。しかし、水面下ではBMWやトヨタ、ホンダ、GM、メルセデス・ベンツなど各社が研究開発を進めています。
黎明期より大きく進化 燃料電池技術
FCEV(燃料電池電気自動車、FCVとも)の実現はまだ先のこと……という話題が尽きない中、昨年12月上旬にBMWとトヨタがFCEVの新計画を発表した。
BMWは、技術実証車として「iX5ハイドロゲン」の限定生産を開始した。英国では、英国トヨタ(Toyota Motor Manufacturing UK)を中心とするコンソーシアムが、政府の資金援助を受けて第2世代の燃料電池システムをトヨタ・ハイラックスに搭載するプロジェクトを進行中である。
1990年代後半、世界中の企業がFCEVの普及を目指し、見事に失敗したが、それ以来、技術は大きく進歩した。特に、車載用リチウムイオンバッテリーの登場と急速な成熟により、EV(電気自動車)がいかがわしいプロトタイプから一般的な乗用車へと姿を変えた。また、初代トヨタ・プリウスから始まったハイブリッド車が、レンジエクステンダー(シリーズハイブリッド車)、プラグインハイブリッド車へと発展していく様子も見てきた。
FCEVは、基本的な仕組みはシリーズハイブリッドとなるが、エンジンではなく水素燃料電池で電力を供給し、加速に必要な瞬発力を補うために小型バッテリーを搭載している。バッテリーには、他の電動車両と同じように回生ブレーキによるエネルギーを蓄えることができる。
また、初期の頃と変わったのは、バッテリー技術とともに、電動ドライブトレインが商業領域で確立されたことだ。BMWの場合、ドライブトレインは自社のEVやプラグインハイブリッド車に使われる第5世代のeドライブ技術を応用している。
もう1つ、黎明期から大きく変わったのは、数百個の小型燃料電池(EVのバッテリーセルに相当)からなる燃料電池スタックの製造である。当初は手作業で組み立てなければならなかったが、BMWではセルの積み上げが完全に自動化されている。積み上げが終わると、圧縮されて鋳造アルミのハウジングに挿入される。水素と酸素を別々にスタックに運ぶ圧力板は、プラスチックと軽合金の鋳造品でできている。
BMWの水素燃料電池システムは125kW(170ps)を発生させる。6kgの圧縮水素を運ぶ水素タンクが2つあり、3~4分の充填で約500kmの航続距離を実現する。
このように、FCEVはほとんど何も変わっていないように見えるかもしれないが、水面下ではさまざまな研究開発が続けられ、燃料電池に関する専門知識も高まっている。BMWは、FCEVのベテランであるトヨタと燃料電池の開発で提携しているほか、ホンダやGMも手を組んでおり、メルセデス・ベンツは燃料電池開発の先駆者であるカナダのバラード・パワー・システムズ社と協力関係にある。