比類なきV12ディーゼルターボSUV アウディQ7 V12 TDIクワトロへ再試乗 6.0Lで500ps
公開 : 2023.01.21 08:25
2.6tのボディに6.0L V12ディーゼルエンジンを搭載した初代アウディQ7。英国編集部が改めて試乗しました。
もくじ
ー6.0L V型12気筒ディーゼルターボの初代
ーまるでロールス・ロイス・ファントム
ー最高出力500ps、最大トルク101.7kg-m
ー羽目を外したような独特の魅力
ーアウディQ7 V12 TDIクワトロ(初代/2005〜2015年/英国仕様)のスペック
6.0L V型12気筒ディーゼルターボの初代
悪ふざけだと勘違いされるかもしれない。筆者は、バッテリーEV(BEV)のポールスター2を普段の足にしている。だが同僚から、BEV以外のクルマと改めて過ごしてみる必要性がある、と説得を受けた。
BEV以外が指すものとは、6.0L V型12気筒ターボディーゼルを搭載したアウディQ7だった。燃料タンクが巨大過ぎ、満タンを躊躇するほどのSUVだ。
登場から数年後、2012年にQ7 V12 TDIを試乗したAUTOCARは、当初とは時代が大きく変わったと結論付けていた。それから11年後、時代はさらに大きく変わった。車重2635kgのSUVは珍しいものではないかもしれないが。
既に場違いと感じられたモデルを、2023年にはどう感じるのだろうか。しばらくの時間を掛けて確かめることにした。
このアウディQ7は初代に当たり、発表は2005年に遡る。フォルクスワーゲン・グループが大型SUVをどこまで高級にできるのか、チャレンジしたようなモデルだった。
果たして、コンセプトカーとして発表されたパイクスピーク・クワトロは、Q7として量産化された。V型12気筒ディーゼルターボに採用された技術は、当時のル・マン・マシンと共有しているという噂だった。
販売的には大成功を収め、Q7とポルシェ・カイエンへの確かな支持が、ベントレー・ベンテイガを導いたといっても良いだろう。市場全体の拡大にも繋がった。
まるでロールス・ロイス・ファントム
筆者はQ7に魅力を感じる。アウディA8のような大型サルーンを運転していると、要人をお迎えに行く途中の雇われドライバーだと見られる可能性がある。だがSUVなら、自分ためだと受け止めてもらえる。子どもや犬を乗せていても自然だ。
Q7 V12 TDIの新車時の英国価格は10万9825ポンドで、ウォールナット・パネルとレザーで内装が仕立てられるエクスクルーシブ・コンセプトパッケージのオプションは4万4350ポンド。合計、15万4175ポンドだったクルマが、わたしの元へやってきた。
BEVの滑らかさを凌駕するような質感が、広い速度域で味わえる。まるでロールス・ロイス・ファントムに乗っているような気にさせる。あるいは、洋上を豪快に進むモーターボートか。
そんなわけで、写真撮影の場所には海岸を選んだ。グレートブリテン島の南部、ドーセットは英国有数の高級ボートが集まる場所。この街で製造され、係留され、航海に出る。
もはや、筆者は理想的な1艘を注文する必要はない。大きなディーゼルエンジンを搭載し、贅沢なウッドパネルで仕立てられたSUVが手元にある。海へは出られないが、海岸線に止めてリアハッチを開けば、リアデッキ部分で日光浴もできる。
Q7は良い年を重ねたようだ。2023年に見ても大きなクルマではあるが、全長5m、全幅や全高が2mというモデルは以前より数が増えた。当時より目立たないように思う。内装は風合いを増し、まだ美しい。