EVの大幅値下げは「危険」 テスラの露骨な行動に警鐘鳴らす ライバル企業の反応は
公開 : 2023.01.18 18:05
先週、大幅な価格引き下げを実行したテスラ。製造コスト低下と在庫処理が理由と考えられますが、急な値下げはリース顧客や中古車市場に悪影響を及ぼしかねないという指摘もあります。キアの英国部門トップに話を聞きました。
長期的に悪影響も? テスラの値下げに警鐘
テスラは先週、米国・欧州・中国・アジアの各市場で大幅な値下げを実行した。英国では、クロスオーバー車のモデルYで最大8000ポンド(約125万円)も引き下げられ、話題を呼んだ。競合他社はこれをどう受け止め、対処するのだろうか。
韓国の自動車ブランドであるキアは、欧州で複数のEVを展開しているが、テスラの値下げにすぐさま対抗することはなさそうだ。キアの英国部門を率いるポール・フィルポットCEOは、そのような「露骨」な行動は、長期的には中古車の買取価格などに「危険」な影響を及ぼしかねないと指摘している。
テスラは、大幅な価格改定を可能にした理由として、サプライヤーコストの削減を挙げている。しかし、テスラは前四半期に販売台数よりも生産台数が上回ったとされており、処理しなければならない在庫を抱えていたと考えられる。製造コスト低下と在庫処分。この2つが値下げの主な理由だろう。
しかし、キア英国部門のフィルポットCEOは、このような動きに慎重な姿勢を見せている。「価格を下げるというのはかなり危険な戦略で、それを実行する前に、採れる手段はたくさんあります」
「ほとんどの新車はPCP(個人契約購入)かリースで購入されますが、支払額を決定する2つの重要な要素として、前金と残価があります。テスラのように新車価格を5000ポンドから8000ポンド引き下げれば、残価に影響が出る可能性もあります。あくまでも市場が判断することですが、当社ではそのように考えています」
「つまり、価格を下げたがために残価が損なわれ、リース顧客にとっては何の得にもならない、というリスクがあるのです。さらに、現在リース契約している顧客は、リース期間中はある程度の公平性が保たれると考えているかもしれませんが、契約終了後に残価の減少によってそれが損なわれたことに気づくかもしれません。フリートバイヤー(社用車・公用車などの購入者)がどのように反応するかは興味深いところです」
「そして、値下げ前に高い価格で購入した人たち(テスラの場合、英国で1万6000人近く)と向き合わなければなりません」
「残価があるからこそ、わたし達は強力な中古車を確立するために懸命に取り組んできたのです。残価はシステム全体の糧となるため、当社は残価の維持に非常に多くの時間を費やしています」
「市場の動向を見守りたいと思いますが、価格引き下げを検討する前に、供給のコントロール、ファイナンスサポート、戦術的な提案など、既存のオーナーを守るために取るべき行動はあります」
キアは昨年、英国で記録的な新車販売台数を記録し、初めて10万台を突破した。主力車種のニロEVは8か月、EV6は12か月の納車待ちが発生しているという。今年後半には、テスラ・モデルXのライバルとなる7人乗りのEV9を新たに発売する予定だ。