フェラーリやランボ出身も ベテラン集う新興企業 2025年のSUV発売に大きな一歩
公開 : 2023.01.19 06:05
イタリアの新興EVメーカー、アエラは、フェラーリやロータス、ランボルギーニで経験を積んだ人物を起用し、2025年の電動SUV発売を目指しています。早ければ今年末にも開発車両のテスト走行を開始する予定です。
スーパーカーとEVの経験豊富な人材を起用
イタリアと米国に拠点を置く新興EVメーカー、アエラ(Aehra)は、フェラーリとロータスで経験を積んだフランコ・チマッティ氏を開発責任者に抜擢し、2025年の市販車発売に向けて大きな一歩を踏み出した。
チマッティ氏はフェラーリに32年間在籍し、ロードテスト部門のマネージャーとして512 TR、456 GT、550マラネロなどの開発を監督。その後、車両コンセプトと先行開発責任者を24年間務めたことで知られている。
在籍期間中に100件以上の特許を取得したほか、フェラーリのシミュレーション部門を統括し、コンセプトカー開発の指揮を執っており、360、612スカリエッティ、カリフォルニア、458、599などのプラットフォームの構想に携わった。
最近では、ロータスの車両アーキテクチャ・エンジニアとして、新しいモジュール式EV用プラットフォームの開発に貢献し、2025年から発売される新型EVの開発プログラムをまとめた。
新興EVメーカーのアエラにとって、チマッティ氏の車両開発における豊富な経験は貴重なものになるだろう。アエラは2025年初頭に電動SUVを、その数か月後には電動セダンの発売を予定している。あと2年で、2台の新型EVを完成させなければならないのだ。
チマッティ氏は3月1日からアエラの新しい職務に就く。AUTOCARの取材に応じたチマッティ氏は、「高級EVのブレークスルーを実現する企業で働く、とてつもなくエキサイティングな機会」だと述べている。
彼は、チーフデザイナーのフィリッポ・ペリーニ氏(ランボルギーニ出身)と20年以上の付き合いがあり、「デザインとエンジニアリングに対する彼の総合的なアプローチを高く評価している」とし、密接に連携していく姿勢を示した。
スタートアップ特有のスピード感 軽いフットワーク
アエラの創業者兼CEOであるハジム・ナダ氏は、チマッティ氏の起用について次のように語っている。
「彼(チマッティ氏)は、ICE車のダイナミクスにおける豊富な経験を持っています。フェラーリなどの性能は、まさにビークル・ダイナミクスに焦点を当てたものです。しかし同時に、彼はEV用プラットフォームの開発を担当したというユニークな特徴も持っています」
「彼に当社の製品を見せると、EV市場の真空を埋めるイタリアンブランドを始動させるというアイデアに共感を示してくれました。アエラのデザインと製品のユニークさに魅力を感じてくれたため、わたしは彼を説得する必要があまりなかったのです」
ナダCEOは、半年ほどで新型「SUV」(正式名称)の開発が進み、開発部門を大幅に拡張して20人程度に増やす必要があると明かした。この拡張したチームを率いるのがチマッティ氏で、2023年末までに実走行可能なプロトタイプの完成を目指す。
アエラのアセットライト(資産保有を最小限に抑える経営戦略)に従い、新型SUVは、基本アーキテクチャやドライブトレインを含め、主に既製部品を使用する予定だ。
「開発は主にサプライヤーが行う」とナダCEOは述べているものの、チマッティ氏はこれらの既製部品を最適な形にまとめあげる責任を負う。
「エンジニアリングの面では、外部エンジニアリングの比重が大きくなっています。各サブコンポーネントを当社のプラットフォームのニーズに合わせて適合させるのです。例えば、電気駆動装置はトランスミッションと車輪に接続するコネクタの種類が決まっていて、それを当社のパッケージに合わせて調整する必要がありますし、バッテリー管理システムもニーズに合わせて調整することになるでしょう」
「可能な限り既製のものを使おうとしていますが、もちろんその中にも開発ニーズはあります」
「インバーターやアクスル、トランスミッションなどを再設計するのではありません。わたし達の仕事は、開発ではなく、統合が中心です。それが、当社がとっている重要なエンジニアリング・アプローチです」
アエラは2028年までに、年間5万台を自社工場で、あるいは「品質管理の負担が大きければ」サードパーティーで生産するという目標を掲げている。部品やEV用バッテリーのサプライヤーは今後数か月で決定される予定である。