2024年への有能なアンカー ボルボXC90 T8リチャージへ試乗 小変更で走りを向上

公開 : 2023.01.28 08:25

ボルボの上品な7シーターSUV、XC90が小変更。質感の良い車内や活発なパワートレインを、英国編集部は評価します。

珍しい7シーターでPHEVのSUV

最近のボルボXC90は、少々存在感が薄いように思う。2024年のデビューが予定されている、同サイズの新しいバッテリーEV(BEV)、EX90へ注目が集まっているためだろう。現行型の登場は2015年と、8年ほど経過していることも理由だと思う。

7シーターの大型SUVは珍しくないが、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)に限っていえば、実は選択肢はそれほど多くない。英国市場を見渡すと、価格帯は異なるものの、ヒョンデ・サンタフェ程度となる。

ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)
ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)

XC90の場合は、駆動用バッテリーとモーターを巧みにパッケージングしているため、PHEV版でも5シーターへ絞る必要がない。そのおかげで、特定のニーズを持つ人へ独占的にビジネスを展開できていた。

そんなXC90だが、ハイブリッド・パワートレインの改良と、インフォテインメント・システムや運転支援システムのアップデートが施された。装備内容を見直し、トリムグレードも再設定されている。モデルライフをまっとうするために。

XC90 T8リチャージの場合、リアアクスル側に組まれる駆動用モーターは、88psから145psへパワーアップ。駆動用バッテリーも14.9kWhを得ている。その結果、CO2の排出量を30g/kmまで削減し、英国では有利な税金区分に含まれるようになった。

インフォテインメント・システムは、グーグル・アンドロイドをベースとした最新版を獲得。ネットワークを介したデータ通信を可能とする、コネクテッド機能も追加されている。スマートフォン・ユーザーとしては、メリットが多い内容といえる。

8年前のデザインとは思えないインテリア

ただし、メニュー構造は直感的でわかりやすいのだが、入力インターフェースがタッチモニターのみで、操作は少々面倒に感じることもある。ロータリーコントローラーなどがあれば、より印象は優れるだろう。

腕を伸ばしてタッチモニターに触れることは、基本的に運転中は難しい。安全性に対して高い意識を持つボルボは、これに疑問を感じていないのだろうか。

ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)
ボルボXC90 T8リチャージ・プラスダーク(英国仕様)

もっとも、システム自体の仕上がりは良い。グーグル・ベースの音声認識機能は理解度が高く、ナビの目的地を設定する場面では特に有効だった。

インテリア自体には目立った刷新は与えられていないが、空間は広々としていて、設えの水準は非常に高い。ソリッドな雰囲気があり、快適に長時間過ごせるだろう。素材の質感なども含めて、8年前のデザインだとは思えないはず。

環境への意識も高いボルボらしく、試乗車のシートはウールを混合したテキスタイルで仕立てられていた。レザーやフェイクレザーとは異なる、新鮮味のある高級感が醸し出され好印象だった。グレー基調の色合いも好ましい。

フロントシートのサイズは大きく、角度の調整域も広く、掛け心地は素晴らしい。2列目も、高身長の大人でもゆったり過ごせる。3列目は広さに制限がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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