ディーゼル車を買うメリットがない? 英国で軽油価格が高騰 ガソリン車優位か
公開 : 2023.01.31 18:05
英国では最近の燃料価格高騰により、ディーゼル車のコスト優位性が低下しています。燃費が良いことで知られるディーゼル車ですが、ガソリンより高い軽油価格や車両購入費用などから、メリットが小さくなっています。
ディーゼル車のメリット減少 しかし朗報も
昨今の英国では、ディーゼル車を選ぶ人が減ってきている。2022年のディーゼル車の新車登録台数は約40%、ディーゼルベースのマイルドハイブリッドでは約27%減少した。これは、ガソリン車よりもディーゼル車を選ぶ経済的メリットが低下しているからだ。
昨年1月の第1週、英国で軽油1Lあたりの価格はガソリンより4ペンス(約6.4円)高かった(軽油1.45ポンド/l、ガソリン1.49ポンド/l)。このようにガソリンよりも軽油の方が高いという価格差は2003年以来続いているが、一般的にディーゼル車の燃料消費量はガソリン車の3分の1程度であるため、ランニングコスト面で分があった。
しかし、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻の直後、この価格差が大きく広がった。2023年の第1週になると、軽油の1.74ポンド(約280円)に対し、ガソリン1.52ポンド(約245円)と、22ペンスもの差がついている。
この価格が続いた場合、ディーゼル車の燃費メリットは小さくなってしまう。例えば、英国仕様のBMW 3シリーズの320dスポーツと320iスポーツを比較すると、6万マイル(約9万6500km)の走行でガソリン代より軽油代の方が1290ポンド(約20万円)安い計算になる。しかし、2022年1月時点の価格では、2046ポンド(33万円)も安くなるのだ。
ディーゼルエンジンを搭載したBMW 320dスポーツの新車価格は4万1870ポンド(675万円)で、320iスポーツの3万8990ポンド(約629万円)より高く、購入時の税金も710ポンド(約11万円)高い。燃費の良さを際し引いても、ディーゼル車を選ぶメリットは少ない。
RAC(王立自動車クラブ)の燃料広報担当者であるサイモン・ウィリアムズ氏によれば、軽油がガソリンよりはるかに高くなった理由は、ウクライナ戦争と、英国が軽油よりガソリンを優先して生産する傾向にあることに端を発しているという。
「英国の製油所は、ガソリンの生産に主眼を置いています。そのため、わたし達は軽油を大量に輸入してきました。昨年までは、ロシアが最大の軽油供給国であり、国内需要の3分の1を賄っていました。2022年2月のウクライナ侵攻で、ロシア産軽油の輸入は途絶えました。現在、英国は他の供給国とその高い卸売価格に依存しています」
幸いなことに、ディーゼル車のオーナーには、中古車価格の上昇という朗報もある。調査会社Cap HPIの予測戦略責任者であるディラン・セッターフィールド氏によると、ロシアのウクライナ侵攻と燃料価格の上昇の直後、中古ディーゼル車の価値は下がったが、消費者の需要は底堅く推移しているとのことだ。
その結果、直近の3か月間でディーゼル車の価格はガソリン車の価格を上回っているという。
「ディーゼル車は、走行距離の多いドライバーにとって、依然として賢明な選択肢です」とセッターフィールド氏は言う。ディーゼル車の新車登録台数は減少しているが、将来的に中古車価格の上昇が見込める。つまり、給油で損した分は、将来の車両売却価格によって取り戻すことができるだろう、と彼は考えているのだ。
いずれにせよ、燃料価格の高騰により、ディーゼル車の「価値」が短中期的に揺らいでいることは確かなようだ。