290万円以下のクラシック・スポーツ MG TD モーガン・プラス4 1950年代の2台

公開 : 2023.02.26 07:05

新しいホットハッチと同等以下の値段で、魅力的な旧車が狙えるとする英国編集部。年代毎に6回シリーズでご紹介します。

掘り出し物といえるクラシック12台

ご存知のように、通貨の価値が下落し物価が上昇する、インフレが世界的に進んでいる。ガソリンは記録的な値段で、新車価格は右肩上がり。クラシックカーも高騰が続き、手の届かない存在になったと嘆く読者も多いはず。

社会的な負担も増える一方で、自由に使える資金は目減りする一方だ。だが、まだ掘り出し物といえるクラシックは存在する。誰もが憧れるようなアイコンを避け、コレクターズモデルは相手にしない。そうすれば、魅力的なスポーツカーが残ってくる。

290万円以下のクラシック・スポーツ 1950年代から2000年代 英国編集部が選ぶ12台
290万円以下のクラシック・スポーツ 1950年代から2000年代 英国編集部が選ぶ12台

今回は、ブリティッシュ・スポーツ全盛期の1950年代から21世紀を迎えた2000年代まで、各年代のドライビング・ファンなモデルを洗い出してみた。真新しいホットハッチよりお手軽といえる、1万8000ポンド(約289万円)の英国価格を上限に。

2台づつ比較することで、互いの魅力へ迫れたと思う。総勢12台、6回シリーズと長編になったが、お楽しみいただければ幸いだ。

MG TDとモーガン・プラス4 2台のロードスター

2023年も、クルマ好きにとって状況が好転する気配はないようだ。第二次大戦後の緊縮財政時代のよう、というのは大げさかもしれないが。

そんな戦後間もない1950年代のクラシックカーとなると、70年に及ぶ歴史が重なり、驚くほどの価値が生まれている例もある。だが、すべてがそうとは限らない。カッコよくて今でも楽しめる性能を備えつつ、お手頃な例もゼロではない。

レッドのMG TDと、ブリティッシュ・グリーンのモーガン・プラス4
レッドのMG TDと、ブリティッシュ・グリーンのモーガン・プラス4

英国市場を俯瞰すれば、1万8000ポンド(約289万円)以内に2台のスポーツカーが含まれる。MG TDとモーガン・プラス4というロードスターだ。ただしプラス4の場合は、相当な整備も必要になるだろう。

この頃のMGやモーガンは、北米市場を強く意識していた。実際、今回ご登場いただいた2台は工場を出ると大西洋を渡り、アメリカのナンバーを取得している。

1950年代のモーガンを少ない心配で楽しむなら、4/4の方が望ましい選択ではあるが、予算の上限に引っかかる。基本的に堅牢で構造は単純。スリリングなドライビング体験を味わえることは間違いない。

焦点が当てられた操縦性の向上

MG TDは1949年の発表で、1950年に販売がスタート。モーガンの市場を脅かした。

当時、MGの開発チームは先代に当たるTCを分析。パワートレインやスタイリングの魅力を維持しつつ、開発予算を抑えながら、進化させる方法を模索した。

MG TD(1949〜1953年/北米仕様)
MG TD(1949〜1953年/北米仕様)

そこで焦点が当てられたのが、操縦性の向上。ステアリングラックをラック・アンド・ピニオン式にし、フロント・サスペンションをウイッシュボーンとコイルスプリングの組み合わせに改めた。

ブレーキはフェードしやすいという課題があったが、ベンチレーテッド・スチールホイールを履かせて対応した。今回のTDには、社外品のワイヤーホイールが組まれているが。

シャシー剛性は、ダッシュボード付近にスチール製の補強材を追加し強化。シャシー自体も高剛性なYフレーム構造を採用し、リア・アクスルがその下へ通された。より長いサスペンション・ストロークを与え、乗り心地にも貢献した。

エンジンは、先代のTCと同じ4気筒1250ccのXPAGユニットを継投。最高出力も54psと変わらないが、1951年に新しいエンジンブロックとオイルサンプへ刷新されている。

生産は1953年までとモデルライフは短いものの、ほかにも多くの改良が施され、高性能化するオプションも用意された。その後、進化版のTDへバトンタッチしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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