290万円以下のクラシック・スポーツ ランチア・ベータ・モンテカルロ ポルシェ914 1970年代の2台

公開 : 2023.03.04 07:05

新しいホットハッチと同等以下の値段で、魅力的な旧車が狙えるとする英国編集部。年代毎に6回シリーズでご紹介します。

身近な存在になったミドシップ・スポーツカー

1970年代、ミドシップ・スポーツカーは身近な存在になった。モーターショーの展示台に飾られるコンセプトカーから、一般道を走る量産車へ急速に展開していった。

北米を中心に人気を集めた英国製スポーツカーは、その頃には賞味期限が過ぎていた。他国のメーカーが手頃な2シーター・モデルを売り込むのに、丁度良い状況でもあった。

ブルー・グリーンのランチア・ベータ・モンテカルロと、レッドのポルシェ914
ブルー・グリーンのランチア・ベータ・モンテカルロと、レッドのポルシェ914

そんな1970年代から、1万8000ポンド(約289万円)の予算で狙えるクラシック・スポーツカーを選ぶなら、ランチア・ベータ・モンテカルロとポルシェ914という2台が挙げられる。生産期間はずれているが、ジュニア・スーパーカーとして好対照だと思う。

1969年に生産が始まった914は、FRモデルのポルシェ924と入れ替わるように、1976年にディーラーから姿を消した。一方のベータ・モンテカルロは1975年に発表され、途中の生産停止を挟みながら、1984年まで提供が続いている。

どちらも4気筒エンジンをシャシー中央に搭載するミドシップ。圧倒的なスピードではなく、機敏な操縦性に強みがある。

914はカルマン社が、ベータ・モンテカルロはピニンファリーナ社が製造を担った高価なボディを相殺するべく、可能な限り量産車の部品を流用している点でも共通する。タルガトップやスパイダーなど、ボディスタイルも凝ったものだった。

フォルクスワーゲンとの共同開発

ベータ・モンテカルロは、フィアット124クーペの後継モデルとして開発が進められ、同じくフィアットX1/9の格上モデルに据えられる予定だった。しかし、量産化の直前にランチアへブランドチェンジ。新しい名前が与えられた。

実際、技術者のアウレリオ・ランプレディ氏が設計した2.0Lツインカム・エンジン以外、ベータ・シリーズとの共通点は殆どなかった。本来の流れを汲む、FFのベータ・クーペも存在していた。

ランチア・ベータ・モンテカルロ(1975〜1978年、1980〜1982年/英国仕様)
ランチア・ベータ・モンテカルロ(1975〜1978年、1980〜1982年/英国仕様)

北米市場へは、ランチア・スコーピオンという名前で上陸。しかし、排出ガス規制に対応するため馬力が削られ、スタイリングを壊す大きなバンパーが与えられ、充分な人気は得られなかった。1年で彼の地での販売は終了している。

初期のベータ・モンテカルロは、フロントブレーキがロックするという深刻な問題を抱えていた。それを改善するため1978年に生産は一時停止され、1980年からシリーズ2として提供されている。

対するポルシェ914は、フォルクスワーゲンとの共同で計画がスタート。設計・開発を主に担ったのはポルシェで、新たなエントリーモデルの創出を目的としていた。デチューン版の2.0Lフラット6を搭載した、912の交代も視野にあった。

フォルクスワーゲンは、カルマンギアにかわるスポーツモデルの獲得を考えていた。しかし、新しく同社CEOに就任したクルト・ロッツ氏は、ポルシェとの緩やかな協働関係に疑問を抱き、デザインの権利を巡って対立してしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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