ツインモーターで312ps BMW iX1 xドライブ30へ試乗 内燃エンジン版の印象改善

公開 : 2023.02.21 08:25

BMW最小のSUV、X1のEV版となるiX1。電動パワートレインで航続距離418kmの実力を、英国編集部が評価しました。

電動化で内燃エンジン版の印象を改善

ガソリンエンジンを搭載するBMW X1は、今ひとつまとまりが良くない。車内空間にはゆとりがあり、インテリアも使い勝手が良く、燃費も悪くない。だが、エンジンは活気に欠け、トランスミッションも滑らかではなく、操縦性には輝きが乏しい。

ミュンヘンのブランドとして、強みがうまく発揮されていないように感じられた。インフォテインメント・システムの操作性も、従来より向上したとはいえないだろう。

BMW iX1 xドライブ30 xライン(英国仕様)
BMW iX1 xドライブ30 xライン(英国仕様)

それでは、パワートレインが電動になるiX1の仕上がりはどうだろう。BMWは、内燃エンジン・モデルと並行するカタチで、バッテリーEV(BEV)のモデル戦略を進めている。基本的には、X1の兄弟といっていい。

結果からいってしまうと、66.5kWhの駆動用バッテリーと190psの駆動用モーターを2基搭載することで、内燃エンジン版の印象を改善している。運転していて心地イイ。

システム総合での最高出力は312psを誇り、車重が2010kgあるとしても間違いなく速い。実際のところ、シングルモーターでも不足ないと感じるほど。航続距離でも有効になるはずだが、BMWはそれを計画していないようだ。

アクセルペダルの反応も良く、滑らかに加減速できる。回生ブレーキは3段階の強さを選べ、ブレーキペダルを踏まずに発進から停止までまかなえるワンペダル・モードも備わる。可能な限り惰性走行できる、コースティング・モードはない。

航続距離や操舵感など気になる部分も

ツインモーターによる四輪駆動と、知的なトラクション・コントロールで、パワーは漏れなく路面へ伝えられる。リアアクスルを駆動するモーターを積極的に動かすことで、コーナー出口での意欲的な加速も実現している。

ただし、BEVとしての課題もゼロではない。駆動用バッテリーの66.5kWhという容量は、このクラスでは小さめ。航続距離は418kmがうたわれているが、現実的には夏場で340km、冬場で300kmほどになるだろう。

BMW iX1 xドライブ30 xライン(英国仕様)
BMW iX1 xドライブ30 xライン(英国仕様)

急速充電能力も際立つ数字ではない。アウディQ4 eトロンと同等の130kWを実現しているとはいえ、ジェネシスGV60ボルボC40 リチャージには及ばない。

実際に試してみたところ、充電量40%までは120kWが保たれていたが、それ以降は徐々に速度が低下していく様子だった。短い航続距離をリカバーするほどではないといえる。

ちなみに、ナビゲーションの目的地で急速充電器を指定すると、駆動用バッテリーが予め最適化される。ドライバーが任意で設定することも可能だ。

それ以外のドライビング体験は、内燃エンジン版のX1に準じる。ステアリングホイールは軽く回せるが、反応はやや一貫性が乏しい。手のひらへの情報量も僅かで、自信を抱かせるものとはいいにくい。

ドライブモードをスポーツにすると、ステアリングホイールは適度に重くなる。しかし、乗り心地は硬くなり、傷んだ路面との相性は低下する。アダプティブダンパーは備わるが、ドライブモードによる設定に固定され、個別に調整できないのが惜しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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