新型ルノー・カングー 日本の路上で初試乗!  もはや日本仕様が欧州仕様を超えている理由

公開 : 2023.02.24 08:00  更新 : 2023.02.24 10:22

新型ルノー・カングーに日本の路上で試乗できる日がやってきました。欧州仕様を超えていると筆者が考える理由をお伝えします。

好調ルノーカングー加わる

じつは日本でルノーが絶好調だ。昨年は8615台を販売した。

2022年は先代カングーがカタログ落ちし、屋台骨の1つにして体育会銘柄のルノー・スポールもアルピーヌに発展的吸収され、ルーテシアR.S.とメガーヌR.S.がともにモデルライフ終盤を迎えていたにも関わらず。

新型ルノー・カングー
新型ルノー・カングー

それだけアルカナにキャプチャー、ルーテシア、トゥインゴといった「フツーのルノー」が、日本市場でコンスタントに売れるようになった裏返しといえる。

そして今回、満を持して虎の子の、新型カングーを投入する。試乗して確信したことだが、MPVとしてリュドスパスとして、日本仕様カングーはもはや欧州仕様を超えた出来映えだった。

というのも、初代カングーは90年代末から約10年、先代カングーこと2代目は2009年から2023年まで丸14年ものモデルライフを誇った超長寿モデルだった。

カングー1と同2が「商用車を乗用車風に改めた」という、オマケかサープラス感覚だったのに対し、今次のカングーのコンセプトは最初から「商用と乗用のハイブリッド」という半々の感覚。

どちらが優先ではなく、ルノー日産三菱アライアンスのCMF-CDプラットフォームを用いて、いずれも重視するという欲張り方向だった。

生産は北仏、モブージュ工場で、じつは日産NV200やメルセデスのTクラスと同じラインで仕上げられてくる。

走らせる前に発見した魅力は

新型カングーはレベル2相当のADASやスマホとの接続性、居住性や快適性については、乗用車レベルとして遜色ない。

一方で、走行距離が嵩みやすくドアの開閉頻度も多い商用車ベースらしく、堅牢性や信頼性に係る部分は並の乗用車の比ではない厳しいテストを経ている。平たくいえば、14年の間により厳しさを増したユーロNCAPや、今どきのユーザーに求められる利便性装備に、小手先でなく骨太対応している。具体的には、車軸を担うサスペンションメンバーはエスパスから流用し、フロントメンバーも追加して、前車軸周りを強化。リアのトーションビームも新たに開発し、足まわりのストローク量は従来モデル同等を確保しつつ、ロールを抑える方向という。

ヘッドランプはすべてのグレードでLEDライトを採用し、ロングライフと省電力/省燃費かつ照射範囲の明るさ/広さを各段に向上させている。
ヘッドランプはすべてのグレードでLEDライトを採用し、ロングライフと省電力/省燃費かつ照射範囲の明るさ/広さを各段に向上させている。

またヘッドランプはすべてのグレードでLEDライトを採用し、ロングライフと省電力/省燃費かつ照射範囲の明るさ/広さを各段に向上させている。

室内で目につく点としては、スライドドア開口部はきもち広がりつつ、Bピラーが太くなってスライドドアのキャッチ周りの造りがゴツい。

またダッシュボードは近年のルノー車に共通する緩やかなSを描くタイプで、バイゾーン・エアコンの3連ダイヤルのクローム使いなど、商用車離れした質感を誇る。

広々したハコの空間ながらスライドドアを閉じた時の気密性は、国産のミニバン辺りと比べると、木造住宅と今どきの断熱住宅ほどの違いを感じるかもしれない。

ちなみに試乗日は極寒だったので分厚い手袋をはめていたが、ドアハンドルやおもな操作ボタン類の扱い易さは、さすが欧州のLCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル、小型商用車のこと)出身といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。

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